イーケプラ錠の不均等処方について疑義照会
イーケプラ錠<レベチラセタム>は、これまで【朝:750mg、昼:0mg、夕:0mg、寝る前:500mg】の1250mg/日で患者に処方されていたが、今回【朝:500mg、昼:0mg、夕:0mg、寝る前:1000mg】の1500mg/日に増量された。しかし、薬剤師は、朝と寝る前の用量が逆ではないかと考え、疑義照会を行ったところ、【朝:1000mg、昼:0mg、夕:0mg、寝る前:500mg】の間違いであることが判明した。服薬の時間帯によって用量が不均等となる処方には、十分に注意する必要がある。
<処方1>17歳の女性。病院の小児科。
イーケプラ錠500mg | 2錠 1日2回 朝食後・寝る前 90日分 |
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イーケプラ錠250mg | 1錠 1日1回 朝食後 90日分 |
<処方2>
イーケプラ錠500mg | 3錠 1日2回 朝食後・寝る前 90日分 (朝食後1錠、寝る前2錠) |
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<処方3>
イーケプラ錠500mg | 3錠 1日2回 朝食後・寝る前 90日分 (朝食後2錠、寝る前1錠) |
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<効能効果>
●イーケプラ錠250mg・錠500mg・ドライシロップ50%<レベチラセタム>
・てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)
・他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の強直間代発作に対する抗てんかん薬との併用療法
患者には、前回までイーケプラ錠が1250mg/日【朝:750mg、昼:0mg、夕:0mg、寝る前:500mg】で処方されていた<処方1>。しかし、今回はイーケプラ錠が1500mg/日【朝:500mg、昼:0mg、夕:0mg、寝る前:1000mg】に増量されていた<処方2>。薬剤師は、服薬の時間帯によって用量が異なる不均等処方であり、前回までは朝の用量のほうが多かったのに、今回は寝る前のほうが多くなっていたことに違和感をもった。
薬剤師が患者の母親に確認したところ、「1日1500mgに増量すると話があったから、1500mgならそのままで大丈夫」と言った。しかし、母親から日中にけいれんが起きることが多いと聞いたため、日中のけいれん予防のためには、朝の投与量が多いほうが良いのではないかと気になった。そこで、疑義照会を行ったところ、イーケプラ錠は1500mg【朝:1000mg、昼:0mg、夕:0mg、寝る前:500mg】に変更された<処方3>。
医師の処方意図は、朝のみ750mgから1000mgに増量する(寝る前は500mgで変更なし)というものであった。具体的には、250mg錠をなくして、500mg錠3錠のみにしようと考えたが、朝と寝る前の錠数配分を逆に入力してしまった。
抗てんかん薬の不均等処方はよくあることだが、眠気などの副作用や、けいれん発作が起こる時間帯などにより、処方量のバランスは患者個人により異なる。薬剤師は、可能な限り不均等処方となっている理由を患者や家族に確認して把握する必要がある。
不均等処方の場合、服薬の時間帯に応じた用量(錠数)の設定で医師がミスを起こすことがあるので注意する必要がある。前回処方と比較して、変更内容に違和感があれば、まず患者インタビューで確認し、それでも問題が解決しなければ、医師に疑義照会を行い、薬剤師が納得した状態で交付する。
不均等処方が関係したヒヤリハット事例を以下に示そう。
お薬手帳の不均等服用指示の印字もれ
<処方1>20歳台の女性
アナフラニール錠25mg | 1日3錠 1日2回 朝・夕食後14日分 |
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患者が入院した病院の薬剤部から薬局へ、「1日3錠を不均等処方されているようですが、患者がさまざまな飲み方をなさっているようです。朝1錠、夕2錠ですか。それとも朝2錠、夕1錠ですか。」との問い合わせがあった。
患者が病院に持参したお薬手帳には、診療所の心療内科からの処方として、次のように記載されていた<処方1>。病院の薬剤師は、患者にアナフラニール錠の服用方法(朝、夕のそれぞれの服用錠数)を確認したが、あいまいでよく分からなかったとのこと。そこで、病院の薬剤師は、当該薬を調剤した薬局に電話をかけて確認した。電話を受けた薬局は、朝1錠、夕2錠であることを伝えるとともに、お薬手帳の情報が不十分であったことを詫びた。
薬袋には「朝1錠、夕2錠」と記載していたが、患者はよく理解できず、「朝1錠、夕2錠」、「朝2錠、夕1錠」、「朝1錠、夕1錠」、「朝2錠、夕2錠」など、さまざまな飲み方をしていたと思われる。
澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。
薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。
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