Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例182

レキップCR錠の急激な減量を発見し疑義照会

ヒヤリした!ハットした!

今回、患者に処方されていたレキップCR錠<ロピニロール塩酸塩>の用量が急激に減量され1/4(16mg/日から4mg/日へ)になっていた。また、用法変更(朝食後から寝る前へ)も行われていた。レキップCR錠の急激な減量は悪性症候群や薬剤離脱症候群などを引き起こす可能性があり、好ましくないと考えられる。疑義照会を行ったところ、今回はレキップCR錠の用法のみの変更であり、規格単位や用量に変更はなかったことが判明した。

<処方1>60歳台の男性。大学病院の神経内科。

スタレボ配合錠L100 3錠 1日3回 毎食後 90日分
エフピーOD錠2.5mg 2錠 1日2回 朝夕食後 90日分
ノウリアスト錠20mg 2錠 1日2回 朝夕食後 90日分
レキップCR錠2mg 2錠 1日1回 寝る前 90日分

<効能効果>

●レキップCR錠2mg・8mg<ロピニロール塩酸塩>
パーキンソン病

どうした?どうなった?

患者は、これまで「レキップCR錠8mg2錠1日1回朝食後」で服用していたが、今回「レキップCR錠2mg2錠1日1回就寝前」に変わり、用量が急激に減量し、1/4になっていた。また、用法も変更(朝食後から寝る前へ)されていたので、薬剤師は処方変更に関して患者に確認した。

患者:「医師に眠気を訴えたので、レキップCR錠の服用が寝る前に変更になると聞いたが、減量は聞いていなかった気がする。でも先生が減らしているのならこのままでよい。」

薬剤師は、レキップCR錠の急激な減量は悪性症候群のリスクもあり望ましくないと考えた(添付文書の『重要な基本的注意』に記載)。急激な減量とは、どの程度を示すのかが明確ではなかったため、メーカーに詳細を確認したところ、減量する際の目安はなく、添付文書に記載した根拠は作用メカニズムから考えられるものであることが分かった。

患者に漸減する薬剤であることを説明し、疑義照会を行ったところ、今回レキップCR錠は用法のみの変更(朝食後から寝る前へ)で、用量は16mg/日のまま変更はなかったことが判明した。

なぜ?

オーダリングシステムの操作を医師が間違え、レキップCR錠の規格単位を入力ミスしたことが今回用量を間違えた原因と思われる。

なお、レキップCR錠の用法用量は以下である。
『通常、成人にはロピニロールとして1日1回2mgから始め、2週目に4mg/日とする。以後経過観察しながら、必要に応じ、2mg/日ずつ1週間以上の間隔で増量する。いずれの投与量の場合も1日1回経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、ロピニロールとして1日量16mgを超えないこととする。』

ホットした!

急激な減量や中止が望ましくない薬剤は少なくない。薬剤師はそれらを全て把握しておく必要がある。減量、増量などの処方変更に疑問がある場合には、必ず医師に疑義照会することが大切である。
レキップ錠0.25mg・1mg・2mg、レキップCR錠2mg・8mgの各製剤の規格単位間はそれぞれ8倍、4倍の開きがあり、別物を処方間違いすると過量増量、過小減量となることに注意する必要がある。

もう一言

○レキップCR錠の急な減量による悪性症候群と薬剤離脱症候群
ロピニロールの減量、中止が必要な場合は、漸減すること。急激な減量又は中止により、高熱、意識障害、高度の筋硬直、不随意運動、ショック症状等の悪性症候群があらわれることがある。悪性症候群は適切な治療を行わなければ生命に危険を及ぼすため、早期に発見し治療する必要がある。
また、ドパミン受容体作動薬の急激な減量又は中止により、薬剤離脱症候群(無感情、不安、うつ、疲労感、発汗、疼痛等の症状を特徴とする)があらわれることがある。異常が認められた場合には本剤の投与再開又は減量前の投与量に戻すなど適切な処置を行うこと。
(レキップCR錠2mg レキップCR錠8mgの医薬品インタビューフォームを一部改変)

[参考文献]
(1) レキップCR錠2mg/レキップCR錠8mgの添付文書
(グラクソ・スミスクライン株式会社 2021年 12月改訂(第1版))
(2) レキップCR錠2mg レキップCR錠8mgの医薬品インタビューフォーム
(グラクソ・スミスクライン株式会社 2019年10月改訂(第7版))

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2023年3月9日

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