患者のジェネリック医薬品に対する考え方が変化
薬剤師は、『ジェネリック不可』と言っていた患者に対して、アムロジピン口腔内崩壊錠がジェネリック医薬品で継続処方(他の薬局で調剤)されていたことをお薬手帳より発見した。また、患者は『血圧が安定しているから、今回の処方もジェネリック医薬品でも問題ないよ。』と述べた。
患者が経験した治療効果や副作用の状況、医薬品の剤数、ハイリスク薬であるかどうか、自己負担などによって、ジェネリック可否を決める考え方が変化することがある。
<処方1>70歳代の男性。A内科クリニック。6月24日、初回受付。
ザファテック錠100mg | 1錠 朝食後 4日分 |
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<処方2>7月28日。
【般】アムロジピン口腔内崩壊錠5mg | 1錠 朝食後 14日分 |
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【般】ビソプロロールフマル酸塩錠2.5mg | 1錠 朝食後 14日分 |
ザファテック錠100mg | 1錠 朝食後 14日分 |
<効能効果>
●アムロジピンOD錠2.5mg・5mg・10mg<アムロジピンベシル酸塩>
高血圧症、狭心症
患者は、当薬局に初めて来局した時(処方1)の初回アンケートなどで、『ジェネリック医薬品は不安だから先発品がよい。先発品のほうがジェネリック医薬品より効果がある気がする。』と訴えていた。
今回、他の医療機関で処方されていた降圧薬をA内科クリニックから処方してもらえることになり、患者は処方箋(処方2)を当薬局に持参した。薬剤師が処方箋を確認したところ、ザファテック錠100mg以外は一般名処方であった。これまで他の薬局で何を調剤されていたのかを確認するためお薬手帳を見ると、ビソプロロールフマル酸塩錠は先発品(メインテート錠)であったが、アムロジピン口腔内崩壊錠はジェネリック医薬品(アムロジピンOD錠「サワイ」)で継続交付されていた。
薬剤師が患者にその旨を確認したところ、以下のように述べた。
患者:「他の薬局ではジェネリック医薬品でも良いかどうか聞かれた記憶はないが、アムロジピン口腔内崩壊錠はジェネリック医薬品だったの?血圧は安定しているし、アムロジピン口腔内崩壊錠はジェネリック医薬品でもいいよ。」
他の薬局で、ジェネリック医薬品の可否に関してどのような対応をしたかは不明である。今回、当薬局でもアムロジピン口腔内崩壊錠のみジェネリック医薬品で投薬した。しかし、何故アムロジピンのみジェネリック医薬品であったのか詳細は聞き取りできていない。
患者は、アムロジピンOD錠「サワイ」がジェネリック医薬品とは知らずに服用していたが、血圧が安定しているのでジェネリック医薬品でも問題ないと考えるに至ったのかもしれない。今後、ジェネリック医薬品に対する不安感が払拭されたと判断した段階で、ビソプロロールフマル酸塩錠もジェネリック医薬品を紹介する予定である。
患者が『ジェネリック不可』とするのは、『ジェネリック医薬品の品質は劣る』という以下の考え方に基づくものであり(詳細は参考文献(1)参照)、患者の考えは変わらないであろうと薬剤師は思い込んでいた。
(1)ジェネリック医薬品の原薬は海外の粗悪なものを使っているのではないか。
(2)ジェネリック医薬品メーカーは、先発医薬品メーカーと比べて1社あたりの製造販売品目が多いので、各品目に対する品質管理が不十分になるのではないか。
(3)先発医薬品とジェネリック医薬品が同等であるならば、なぜジェネリック医薬品の薬価は安いのか。やはり、品質が劣るからではないのか。
薬剤師は、患者自身が経験した治療効果や副作用、処方されている医薬品の剤数、医薬品がハイリスク薬であるかどうか、患者自己負担などによって、ジェネリック可否が変化することを認識していなかった。
患者が『ジェネリック不可』と判断する理由を聴取し、間違った考え方であれば正しい情報を提供する。
一度『ジェネリック不可』と判断された患者でも、時間の経過により考え方が変わっていないかどうか聴取する。また、他医療機関や診療科からの併用薬などについても先発品とジェネリック医薬品のどちらを希望されるか定期的にチェックする必要がある。
ジェネリック医薬品又は先発品の選択希望に関する実態調査が報告されている(参考文献(2)参照)。処方箋を一薬局へ持参した患者全員を対象として患者背景等の情報を抽出し、患者のジェネリック医薬品変更希望に影響を与える重要因子の探索が試みられた。その結果、医薬品の処方剤数やハイリスク薬処方、患者自已負担がジェネリック医薬品変更希望の要因として影響を及ぼすことが示された。
[参考文献]
(1)ジェネリック医薬品への疑問に答えます~ジェネリック医薬品Q&A~、
(厚生労働省 平成 24年7月)
(2)四宮一昭、池方康一郎、小山敏広、山本和宏、平野剛、北村佳久、平井みどり、千堂年昭:患者のジェネリック医薬品変更希望に影響を及ぼす患者背景・重要因子の探索ジェネリック医薬品の適切な使用促進のために、日本薬剤師会雑誌65(11):1323-1325(2013)
澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。
薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。
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