Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例175

卵アレルギー患者にアレルゲンの含まれる検査食を処方

ヒヤリした!ハットした!

卵アレルギーの患者に、大腸検査のための検査食(サンケンクリンMO、キユーピー株式会社)の指示がでていたが、その検査食には原材料として卵が使用されていた。薬剤師が検査食の摂食手順を説明しようとしたところ、パッケージに記載の食事内容を見た患者は、検査食を摂取しても問題がないか薬剤師に質問した。

<処方1>40歳の女性。病院の消化器科。

ラキソベロン内用液0.75% 10mL 検査前日の夜9時 1回分

(別紙添付)自費:検査食 サンケンクリンMO 1箱

どうした?どうなった?

患者は食品など(卵、豆乳、カニ、メロン、トマト、ウリ、スギ、ヒノキ、動物上皮、金属他)のアレルギーが多く、薬剤師も薬歴から患者がアレルギー体質であることは把握していた。

患者が大腸検査を受けるにあたり、消化器科から<処方1>と検査食の指示が出た。薬剤師が<処方1>を投薬後、検査食(サンケンクリンMO)の説明をしようとしたところ、パッケージを見た患者から即座に「私、卵アレルギーですが大丈夫ですか?」と質問を受けた。検査食のパッケージの原材料名を確認すると、カロリーバー(バニラ味、ココア味)とクッキーに鶏卵が含まれていた。

薬剤師が直ちに病院の消化器科に相談したところ、このようなケースはこれまでに無く、特に注意しておらず気が付かなかったとのことであった。

最終的に、サンケンクリンの食事量と同程度になるおかゆなどで対応することになった。

なぜ?

薬剤師は、患者がアレルギー体質であるため薬剤のアレルギーには注意していたが、検査食にアレルゲンが含まれていることを認識していなかった。今回は患者からの申告があったため、アレルゲンを摂取してしまうという問題は回避できた。

ホットした!

薬剤師は、薬だけでなく、取り扱っている検査食や健康食品等も含めて、アレルギー患者には特に注意して処方する必要がある。

病院から指示される検査食ならば、アレルゲンは入っておらず安心して摂取できると思い込んでいる患者もいることを想定する。その場合、患者はアレルギー歴を申告しない可能性があるため、注意が必要である。

もう一言

サンケンクリンMOの食事内容と含まれるアレルギー表示特定原材料を以下の表に示す。

表.サンケンクリンMOの食事内容と含まれるアレルギー表示特定原材料

メニュー アレルギー表示特定原材料
食事内容 朝食 白がゆ、味噌汁、梅ふりかけ 小麦、さば、乳成分、大豆
昼食 カロリーバー(バニラ味、ココア味)、ゼリー、紅茶飲料 卵、乳、小麦、大豆、りんご
間食 クッキー、粉末オレンジ飲料、あめ湯 卵、乳、小麦、大豆、オレンジ
夕食 ポタージュスープ 乳、大豆、鶏肉
※クッキーは、えび、かに、アーモンド、オレンジ、ごま、もも、りんごを使用した設備で製造している
澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2022年12月7日

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