Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例174

骨折でドライブスルー利用した患者への配慮不足

ヒヤリした!ハットした!

薬剤師はドライブスルーでの投薬時、患者が正面を向いたままで投薬窓口に体を向けなかったことを不思議に思いながら対応していたところ、実は腰の圧迫骨折で受診していた患者だった。

<処方1>60歳代の男性。病院の整形外科。

ボルタレン錠25mg 3錠 1日3回 毎食後14日分
セルベックスカプセル50mg 3Cap 1日3回 毎食後14日分

<効能効果>

●ボルタレン錠25mg<ジクロフェナクナトリウム>
○下記の疾患ならびに症状の鎮痛・消炎
関節リウマチ、変形性関節症、変形性脊椎症、腰痛症、腱鞘炎、頸肩腕症候群、神経痛、後陣痛、骨盤内炎症、月経困難症、膀胱炎、前眼部炎症、歯痛
○手術ならびに抜歯後の鎮痛・消炎
○下記疾患の解熱・鎮痛
急性上気道炎(急性気管支炎を伴う急性上気道炎を含む)

どうした?どうなった?

当薬局では、ドライブスルー形式での来局を受け付けている。

投薬時、当該患者は投薬窓口に全く体を向けず、車の運転席で正面を見たままだった。薬剤師は、愛想のない患者だなと思いつつ、「痛みはいかがですか?」とたずねたところ、患者は腰の圧迫骨折で受診していたことがわかった。

薬剤師は薬局のドライブスルー窓口から投薬を行ったが、後になって、ドライブスルー窓口から出て車の運転席の横で投薬すべきだったと反省した。

なぜ?

患者がドライブスルーを利用する理由として『車の乗り降りや体を動かすのが不自由である等』があることを薬剤師は全く想定できておらず、患者の状態に合わせた配慮ができなかった。

ホットした!

薬局内では、患者が来局してから薬局を出るまで、患者の状態に目を配り、行き届いた対応ができるよう心がける。そのために、普段から様々な状況を想定し、とっさに行動できるようにしておく必要がある。

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2022年11月8日

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