Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例171

説明不足によりアズノールうがい液が使用できない患者

ヒヤリした!ハットした!

患者から、アズノールうがい液4%が使いづらいとの訴えがあった。詳細を聞くと、ボトルの頭部をプッシュするのではなく、ボトルの腹部を押していたことが判明した。

<処方1>70歳代の男性。病院の内科。

フェブリク錠20mg 1錠 1日1回 朝食後 42日分
クラシエ小青竜湯エキス錠 18錠 1日3回 毎食前 3日分
アズノールうがい液4%10mL 1日数回 うがい

<効能効果>

●アズノールうがい液4%<アズレンスルホン酸ナトリウム水和物>
咽頭炎、扁桃炎、口内炎、急性歯肉炎、舌炎、口腔創傷

どうした?どうなった?

患者には、今回で3回目となる『アズノールうがい液』が処方された(処方1)。そこで、薬剤師があらためて服薬指導を実施した。

薬剤師:「前回もお使いいただいていました。その時と同じように、1回5滴を100mLの水で薄めてうがいしてください。」
患者:「これ使いづらいよね。押しても出ないから、ドラッグストアに行って、イソジンうがい薬を買ってしまったよ。」

薬剤師は、患者が間違った使い方をしているのではないかと心配になり、再度アズノールうがい液の使い方を説明した。

薬剤師:「もう一度、ご確認ください。この図(チラシを見せて)のように上の部分を押してください。」
患者:「え!ここを押すのね?容器のアズノールと書いてあるところを押していたよ。ラー油の瓶と同じように押すのね。」

患者の間違った使用法が発覚したため、薬剤師はチラシだけではなく実際の薬剤を見せて押すべきところを指し示した。

なぜ?

前回、前々回にアズノールうがい液が処方された際、担当薬剤師からの説明が不十分であった。また、前回の処方時に、正しく使用できているかの確認も不十分であった。

患者が、ボトル容器の腹部分を押すものと考えた詳細な理由は不明であるが、イソジンガーグル液の使用歴があったため、“うがい薬”と聞き、イソジンガーグル液の使用法(逆さにして容器を押す)を連想したのではないかと思われる。

患者が『ドラッグストアでイソジンうがい薬を買おう』と考えた時、薬局に相談してもらえなかったことから、薬剤師と患者との信頼関係が確立されていなかったと考えられる。

ホットした!

大切な事(今回の事例では押し方)は強調して説明する。患者が理解しやすいように、実物を用いるなどして説明を工夫する。特に、これまで使用歴のある薬剤から他の薬剤への変更があった場合(今回の事例ではイソジンガーグル液からアズノールうがい液への変更)は、特に両者の違いの説明を欠かさないようにする。

高齢などで正しく使用できているか心配な場合には、患者の同意を得て電話モニタリングを行う。

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2022年10月03日

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