キサラタン点眼液 点眼し忘れ時の対応の説明不足
キサラタン点眼液<ラタノプロスト>を継続使用している患者が、時々だが点眼を忘れることがあること、忘れた場合は翌日の朝に点眼していることが分かった。翌朝に前日分を点眼し、寝る前に当日分を点眼する日もあり、その場合1日に2回点眼したことになってしまった。
<処方1>70歳代の男性。病院の眼科。
キサラタン点眼液0.005% | 2.5mL 1日1回 1回1滴 寝る前 |
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<効能効果>
●キサラタン点眼液0.005%<ラタノプロスト>
緑内障、高眼圧症
患者は、緑内障のためキサラタン点眼液を継続して使用していた。ある時、薬剤師は患者に点眼の使用状況を確認した。
患者:「1ヵ月に1~2回くらい点眼を忘れることがあるが、その時は翌朝点眼している。その日は寝る前にもきっちり点眼しているよ。以前に言われたように、1回に1滴しか点眼していない。眼圧は今のところ大丈夫みたい。」
寝る前に点眼を忘れた次の日は、前日分を朝に、当日分として寝る前にと2回点眼することになり、添付文書の「1日1回を超えて投与しないこと。」に反する使用法となっていた。
キサラタン点眼液は、用法用量が「1回1滴、1日1回点眼。頻回投与により眼圧下降作用が減弱する可能性があるので、1日1回を超えて投与しないこと。」とされている。従って、余分に点眼することは避けたほうが良く、1ヵ月に1~2回程度であれば点眼を忘れても翌朝点眼しなくて良いこと、寝る前に忘れるようであれば夕食後などに点眼するよう変更できることを薬剤師は説明した。
患者は、キサラタン点眼液を長く使用しており、1回1滴であることは認識していたが、1日1回までであることは認識していなかった。
薬局での処方時、点眼を忘れたときの対応の説明が不十分であった。もしくは、これまで対応した薬剤師が、キサラタン点眼液の使用忘れ時の対応を把握していなかった可能性がある。
キサラタン点眼液をはじめ各種緑内障治療薬を使用中の患者に、改めて使用状況の確認を行うとともに、点眼忘れ時の正しい対応が説明できるよう薬局内勉強会で情報を共有した。
キサラタン点眼液の『患者向医薬品ガイド』(2021年9月更新)より、使用し忘れた場合の対応について以下に記載する。
【この薬の使い方は?】
●使用し忘れた場合の対応
・決して1回に2滴点眼してはいけません。その日のうちであれば、1回1滴を点眼してください。
・翌日に点眼し忘れたことに気付いた場合でも、1日1回1滴の用法を守ってください。
[参考資料]
●キサラタン点眼液 0.005% 患者向医薬品ガイド
(ヴィアトリス製薬株式会社 2021年9月更新)
澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。
薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。
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