個装箱内の残薬に気づかず破棄
ファスティック錠90<ナテグリニド>の個装箱を手にとって発注作業を行った後、薬剤師は空箱と思い破棄したが、その中に4錠分薬剤が残っていたことが判明した。
<発注カゴ内>
ファスティック錠90 | 10錠PTPシート×10枚(100錠入)の個装箱 |
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<効能効果>
●ファスティック錠90<ナテグリニド>
2型糖尿病における食後血糖推移の改善
ただし、下記のいずれかの治療で十分な効果が得られない場合に限る。
(1)食事療法・運動療法のみ
(2)食事療法・運動療法に加えてα-グルコシダーゼ阻害剤を使用
(3)食事療法・運動療法に加えてビグアナイド系薬剤を使用
(4)食事療法・運動療法に加えてチアゾリジン系薬剤を使用
当薬局では、医薬品の発注は基本的に自動発注になっており、在庫数が発注点を下回ると自動で発注がかかる仕組みになっている。しかし、まれに手動で発注しなければならない時がある。その際、発注カゴに対象医薬品の個装箱を入れておき、カゴの中の個装箱と照らし合わせながら発注作業を進めている。今回、発注作業を行った薬剤師は作業中にファスティック錠の個装箱内の残薬に気づかず、空箱と思い破棄してしまった。
その後、別の薬剤師がコンピューター上の理論在庫数と実在庫数の確認をしたところ、両者が相違していることに気がつき、誤ってファスティック錠4錠が個装箱に入った状態で破棄されていたことが判明した。
個装箱内に薬剤が少量しか残っていなかったことに気が付いた薬剤師は、個装箱を調剤棚に戻してしまうと発注漏れにつながると考えた。そのため、取り急ぎ中身の入った個装箱を発注カゴに入れておき、発注後に調剤棚に戻すつもりであったが、薬剤師は発注作業を行う別の薬剤師に申し送りをしなかった。
また、発注カゴに少量の残薬のある箱(後で調剤棚に戻す予定だったもの)と、残薬のない空箱を区別せずに入れていた。
発注した薬剤師は、残薬が4錠と少なかったために空箱と思い込んでしまったこと、また、発注画面で当薬局のファスティック錠の在庫を確認していなかったことが原因で破棄してしまったと考えられる。
医薬品発注用の発注カゴの中に、空箱のものは箱を完全につぶして平面形にし、一部残薬のあるものは残薬が紛失しないように包装箱に輪ゴムをかけておく(輪ゴムの存在が箱中に薬が入っている事の目印にもなる)。
医薬品発注時には、発注画面で発注医薬品の残薬を必ず確認する。
澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。
薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。
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