アミノバクトの不適当な服用状況を認識し重要性を指導
アミノバクト配合顆粒<L-イソロイシン・L-ロイシン・L-バリン>も含めて60日分の飲み薬が処方されていたが、患者からアミノバクト配合顆粒は沢山余っているので30日分でよいと申し出があった。薬剤師が詳しく理由を聞くと、患者は朝食を摂っていない時に本剤だけ服用していないことがわかった。
<処方1>60歳の男性。病院の消化器科。処方オーダリング。
ウルソ錠100mg | 6錠 1日3回 毎食後60日分 |
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グリチロン配合錠 | 3錠 1日3回 毎食後60日分 |
カナマイシンカプセル250mg「明治」 | 3Cap 1日3回 毎食後60日分 |
アミノバクト配合顆粒 | 3包 1日3回 毎食後60日分 |
<効能効果>
●アミノバクト配合顆粒<L-イソロイシン・L-ロイシン・L-バリン>
食事摂取量が十分にもかかわらず低アルブミン血症を呈する非代償性肝硬変患者の低アルブミン血症の改善
投薬時の会話を以下に記す。
患者:「アミノバクト配合顆粒は沢山余っているので30日分でよい。」
薬剤師:「どうして余っているのですか?特段の理由でもあるのですか?」
患者:「朝食を摂らない時は、空腹時なので飲んではならないと思い省略していた。」
薬剤師:「でも、他の飲み薬は服用していたのですね。」
患者:「アミノバクトってアミノ酸でしょ。食事はちゃんと摂っているから必要ないでしょ。それに、実はアミノバクトは飲みにくいんだよ・・・。」
薬剤師は疑義照会を行い、状況を医師に伝えた。結果的にアミノバクトだけ30日処方に変更になった。
患者は他科受診もしていて、薬局では良く会話をしており、体調はあまり良くなかったので、薬剤師は患者が薬を飲まない時があるとは思っていなかった。
患者は、飲みにくいアミノバクトについては、『毎食後』服用だから朝食を食べていない場合には飲まなくて良いだろう、とこじつけて考えていた(一方で、他の錠剤とカプセルは飲んでいた)。
さらに、アミノバクトをただの栄養剤の様なもので重要な薬とは思っておらず、軽く考えていた。
服用方法を説明するとき、食事をしない時も服用が重要なことをよく説明する。食事自体の必要性、空腹の状態を長くしないことの重要性もあわせて説明する。
薬の働きについても、いつもの薬だからわかっていると思わず、繰り返し説明する。
今回の患者に対しては、アミノバクト服用の重要性について薬剤師が以下のように伝えた。
「肝臓に疾患がある場合、食事の量が十分であっても、血液中の重要なある蛋白成分が少なくなってしまうことがあります。それを補うためにアミノ酸成分が必要なのです。アミノ酸は合計で1日15g弱服用することになっています。単なる栄養剤ではなく薬なので注意してくださいね。」
アミノバクト配合顆粒の効能又は効果:
食事摂取量が十分にもかかわらず低アルブミン血症を呈する非代償性肝硬変患者の低アルブミン血症の改善
効能又は効果に関連する使用上の注意:
本剤の適用対象となる患者は、血清アルブミン値が3.5g/dL以下の低アルブミン血症を呈し、腹水・浮腫又は肝性脳症を現有するかその既往のある非代償性肝硬変患者のうち、食事摂取量が十分にもかかわらず低アルブミン血症を呈する患者、又は、糖尿病や肝性脳症の合併等で総熱量や総蛋白(アミノ酸)量の制限が必要な患者である。糖尿病や肝性脳症の合併等がなく、かつ、十分な食事摂取が可能にもかかわらず食事摂取量が不足の場合には食事指導を行うこと。なお、肝性脳症の発現等が原因で食事摂取量不足の場合には熱量及び蛋白質(アミノ酸)を含む薬剤を投与すること。
[参考資料]
アミノバクト配合顆粒添付文書
日医工株式会社、2012年4月改定(第2版)
澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。
薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。
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