複合要因から後発品の普通錠を徐放錠で誤調剤
ジルチアゼム塩酸塩錠30mg「日医工」(2錠、分2)のところ、薬剤師が誤ってジルチアゼム塩酸塩徐放カプセル100mg「日医工」(2Cap、分2)を集薬してしまった。
<処方1>60歳代の男性。内科クリニック。
ジルチアゼム塩酸塩錠30mg「日医工」 | 2錠1日2回 朝夕食後28日分 |
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*この他にも、数種の服用薬あり。 |
<効能効果>
●ジルチアゼム塩酸塩錠30mg「日医工」<ジルチアゼム塩酸塩>
・狭心症、異型狭心症
・本態性高血圧症(軽症~中等症)
患者の前回の処方せんには、処方薬がヘルベッサー錠30mg<ジルチアゼム塩酸塩>と先発名で記載されていたが、患者の希望により薬局で後発品のジルチアゼム塩酸塩30mg「日医工」に変更して交付していた。
今回からは、処方せんの記載も後発名のジルチアゼム塩酸塩錠30mg「日医工」に変更されていた。しかし、調剤時にジルチアゼム塩酸塩徐放カプセル100mg「日医工」が誤調剤されていることを鑑査薬剤師が発見した。監査薬剤師が調剤した薬剤師に誤調剤のことを報告し、正しい薬剤が収集されて患者に交付された。
調剤した薬剤師は、処方せんに記載されたジルチアゼムの用法が1日2回であったので、徐放製剤だと思い込んでしまった。
また、薬名をパッとだけ見て、先頭の部分の「ジルチアゼム塩酸塩」と末尾の部分の「日医工」しか捉えられておらず、剤形・規格単位までチェックができていなかった。
さらに、当該薬局では、後発品としてジルチアゼム塩酸塩徐放カプセルの方を先に採用していて、普通錠は1ヵ月前から採用することになったので、普通錠になじみが無く、とっさにジルチアゼムの徐放カプセルを取ってしまったと考えられる。
一般名処方、後発品名処方の薬名は長くなるため、先頭の数文字だけを読んで思い込みをせず、必ず薬名を最後まで確認することを習慣づける。
後発品メーカーの屋号(今回の場合は「日医工」)のインパクトが強く、目がそちらに行ってしまう可能性があることを認識する。
更に、用法用量の適応外使用も行われる場合があることから、十分に注意する必要がある。
一般的には、処方せん上の薬名の先頭部分から、用法用量、日数までは、指差呼称して確認しながら調剤することが必要である。
名称が長く、剤形・数字(規格単位、持続時間)を間違いやすい薬剤の一例を以下に示す。
【般】ニフェジピン細粒1%
【般】ニフェジピン錠10mg
【般】ニフェジピン徐放錠10mg(12時間持続)
【般】ニフェジピン徐放錠20mg(12時間持続)
【般】ニフェジピン徐放錠10mg(24時間持続)
【般】ニフェジピン徐放錠20mg(24時間持続)
【般】ニフェジピン徐放錠40mg(24時間持続)
【般】ニフェジピンカプセル5mg
【般】ニフェジピンカプセル10mg
【般】ニフェジピン徐放カプセル10mg(12時間持続)
【般】ニフェジピン徐放カプセル20mg(12時間持続)
澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。
薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。
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