Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例152

ソホスブビル+リバビリン併用療法の副作用で患者が誤薬

ヒヤリした!ハットした!

ソバルディ錠<ソホスブビル>とレベトールカプセル<リバビリン>の併用療法が開始された。患者は最初両剤をきちんと服用できていたが、暫くすると服薬に混乱をきたし、様々な工夫を行ったが、飲み間違えてしまった。原因の一つとして、本併用療法によって注意力障害が発生した可能性が示唆された。

<処方1>50歳代の女性。病院の消化器科。処方オーダリング。

ソバルディ錠400mg 1錠1日1回 朝食後 28日分
レベトールカプセル200mg 4Cap1日2回 朝夕食後 28日分

<効能効果>

●ソバルディ錠400mg<ソホスブビル>
次のいずれかのC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善
○セログループ2(ジェノタイプ2)の患者
○セログループ1(ジェノタイプ1)又はセログループ2(ジェノタイプ2)のいずれにも該当しない患者

●レベトールカプセル200mg<リバビリン>
○ペグインターフェロンアルファ-2b(遺伝子組換え)又はインターフェロンベータとの併用による次のいずれかのC型慢性肝炎におけるウイルス血症の改善
(1)血中HCVRNA量が高値の患者
(2)インターフェロン製剤単独療法で無効の患者又はインターフェロン製剤単独療法後再燃した患者
○ペグインターフェロンアルファ-2b(遺伝子組換え)との併用によるC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善
○ソホスブビルとの併用による次のいずれかのC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善
(1)セログループ2(ジェノタイプ2)の患者
(2)セログループ1(ジェノタイプ1)又はセログループ2(ジェノタイプ2)のいずれにも該当しない患者
○ソホスブビル・ベルパタスビル配合剤との併用による、前治療歴を有するC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善

どうした?どうなった?

患者はC型肝炎の3回目の治療(インターフェロンを含む治療のようであったが、詳細は不明)で十分な効果が得られず、ソホスブビル+リバビリン併用療法<処方1>を開始することになった。
ところが、予定より1週間早い21日後に、ソバルディ錠のみが処方された。患者に確認したところ、「薬を5日間間違えて服用したためソバルディ錠が足りなくなり、1週間早めに受診した。来週また来院する。」とのことだった。

患者によると、この薬の服用を開始してから、物忘れがかなり進んでしまった様である。「1日中、物の置き場や薬を服用したかどうかを失念し、子供に尋ねていたため、最近様子がおかしいと指摘された。服薬開始初期は普通に毎回薬袋から取り出して、間違えずに服用できていたが、暫くすると注意力が散漫になり、薬を毎朝用意したり、飲んだ後の殻を取っておいたり、工夫してもわからなくなるので、1週間分まとめてセットすることにした。薬をセットする時に、レベトールカプセルを朝夕に2Capずつ飲むという処方内容につられて、1錠ずつ朝食後のみ服用するソバルディ錠も朝夕でセットしてしまった。」とのことだった。
患者は、5日間服用した時点で、翌週分をセットしようとしたところ、ソバルディ錠が足りなくなったため、間違いに気づいた。医師に注意力散漫についてきちんと伝えて、今回改めて処方してもらったようである。

なぜ?

患者に確認したところ、レベトールカプセル(長径19.2mm)の細長いカプセル剤と、ソバルディ錠(長径20mm、短径9mm、厚さ7mm)の形が細長く似ていることや、同じ肝炎の薬というイメージが強く、ソバルディ錠もレベトールカプセルと同じ朝夕だと思い込んでしまったことが分かった。
これまで本併用療法で重大な副作用である貧血、倦怠感、頭痛などの発症頻度の高い副作用は注意喚起したが、副作用が疑われる注意力障害から誤薬につながる可能性は予測できなかった。

ホットした!

添付文書に記載された重大な副作用以外にも体調変化には注意する必要がある。
薬による副作用が原因して誤薬、服用忘れが発生し、治療効果への影響、更なる副作用の発生に繋がる可能性がある場合には、可能な限り服薬介助のために家族やヘルパーなどに協力してもらう必要がある。

もう一言

リバビリンとソホスブビルとの併用の場合に、その他の副作用として『注意力障害』(頻度不明)の記載がある。
記憶障害・認知機能低下をおこす薬剤を以下に示す。服薬コンプライアンスにも影響する可能性がある。

抗コリン系薬剤
アトロピン類
スコポラミン(動物実験で認知機能障害誘発に用いる)
ベンソジアゼピン類
抗不安薬、抗うつ薬、抗精神病薬
抗コリン系パーキンソン薬
催眠薬、鎮静薬
炭酸リチウム
スルピリド
抗てんかん薬(フェニトイン、バルプロ酸)
オピオイド、NSAIDs
抗ヒスタミン剤
インターフェロン類
アセタゾラミド
抗菌薬(イソニアジドなど)
抗ウイルス薬(アシクロビルなど)
過活動膀胱治療薬
降圧薬、抗不整脈薬、利尿薬、ジギタリス
副腎皮質ステロイド、抗喘息薬

ポケット医薬品集2021より

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2021年12月3日

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