Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例151

リオベル配合錠からスーグラ錠への変更で食欲不振の訴え

ヒヤリした!ハットした!

処方がリオベル配合錠<アログリプチン+ピオグリタゾン>から、スーグラ錠<イプラグリフロジン>+ネシーナ錠<アログリプチン>に切り替わった患者が食欲不振を訴えた。

<処方1>60歳代の女性。病院の内科。処方オーダリング。

リオベル配合錠LD 1錠1日1回 朝食後

<処方2>

スーグラ錠50mg 1錠1日1回 朝食後
ネシーナ錠25mg 1錠1日1回 朝食後

<効能効果>

●リオベル配合錠LD・HD<アログリプチン+ピオグリタゾン>
2型糖尿病、ただし、アログリプチン安息香酸塩及びピオグリタゾン塩酸塩の併用による治療が適切と判断される場合に限る。

●スーグラ錠25mg・50mg<イプラグリフロジン>
2型糖尿病、1型糖尿病

どうした?どうなった?

<処方1>のリオベル配合錠LD(アログリプチン25mg+ピオグリタゾン15mg)を服用していた患者の処方が変更になり、<処方2>のスーグラ錠(イプラグリフロジン)の服用が開始となった。アログリプチン 25mgは<処方1>の用法用量から変更はない。
当該患者から以下の訴えがあった。

患者:「新しい薬になって1週間ぐらい経ったが、お腹があまり空かない。食べようと思えば食べられるので、食べすぎが抑えられてちょうど良い。前の薬のときはいくら食べてもお腹が空いて仕方なかった。」

悪心はなく困ってはいないようだったので、薬剤師は「食事が摂れないようになってきたら、すぐ連絡してください」と伝えた。
リオベル配合錠を中止(アログリプチンを継続しているため、ピオグリタゾンの中止)した影響かもしれないが、スーグラ錠のメーカーに念のため症状を報告した。

なぜ?

スーグラ錠の添付文書の副作用欄に腹部膨満、空腹(1%未満)の記載はあるが、食欲不振の記載はない。
リオベル配合錠では、副作用として相反する症状である食欲亢進、食欲不振(頻度不明)が起こるとの報告がある。リオベル配合錠に含まれるピオグリタゾンに食欲亢進、食欲不振(0.1~5%未満)の副作用報告がある。
薬剤師は、スーグラ錠において、作用機序から考えて空腹に注意していたが、逆に食欲不振が発生するとは予測していなかった。
患者は切り替え前のリオベル配合錠で食欲が亢進していたため、中止後に食欲亢進がなくなり、スーグラ錠で食欲減退を訴えた可能性もあるが、詳細は不明である。

ホットした!

食欲不振、食欲亢進の副作用は、患者が苦痛に思っていない、重大な副作用につながる可能性が低いという意味では比較的軽微ではあるが、患者の訴えをよく聴取し、使用されている薬との関係を考察する必要がある。
また、添付文書に記載されていないような副作用が発症する可能性があるので、患者からの訴えを良く聞くようにする。

もう一言

以下の表にまとめた薬については、「食欲不振」では無いが、「食欲減退」で副作用が報告されている。

表.「食欲減退」の副作用報告数

インタビューフォーム 市販後調査結果
スーグラ錠
(イプラグリフロジン)
2/1669(0.1%) 23(重篤6)
デベルザ錠/アプルウェイ錠
(トホグリフロジン)
記載無し 4(重篤2)
フォシーガ錠
(ダパグリフロジン)
5mg:2/624(0.3%)
10mg:1/641(0.2%)
5(重篤0)
カナグル錠
(カナグリフロジン)
記載無し 2(重篤0)
ジャディアンス錠
(エンパグリフロジン)
1/1834(0.05%) 4(重篤0)
ルセフィ錠
(ルセオグリフロジン)
記載無し 4(重篤0)

※1型糖尿病対象の試験。

(2021.11.16現在)

[参考文献]

・スーグラ錠
市販直後調査および市販直後調査後の継続安全性監視・情報提供活動結果のご報告(2015年10月)

・デベルザ錠
長期使用に関する特定使用成績調査

・フォシーガ錠
発売開始1年後安全性結果報告

・カナグル錠
特定使用成績調査(長期使用に関する調査)結果のご報告

・ジャディアンス錠
安全性監視活動副作用発現状況報告(販売開始後1年間)

・ルセフィ(大正冨山)
市販直後調査副作用集計結果

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2021年12月3日

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