デパス錠0.5mgをデカドロン錠0.5mgと勘違いし調剤
デカドロン錠4mg<デキサメタゾン>とデパス錠0.5mg<エチゾラム>が並んだ処方せんにおいて、デパス錠0.5mgをデカドロン錠0.5mgと勘違いしてしまった。
<処方1>80歳代の女性。病院の緩和ケア科。処方オーダリング。
Rp1)デカドロン錠4mg | 0.5錠 1日1回 朝食後 |
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Rp2)デパス錠0.5mg | 3錠 1日3回 毎食後 |
<効能効果>
●デカドロン錠4mg・デカドロン錠0.5mg
・抗悪性腫瘍剤(シスプラチンなど)投与に伴う消化器症状(悪心・嘔吐)など
患者は他院から転院してきており、初回から緩和ケア科を受診していた。薬局には今回で4回目の来局だが、そのすべてが代理の方であり、服薬状況などは不明な点が多い。
薬剤師は処方せんを見て、デカドロン錠4mgのすぐ下に、「デ」と「0.5mg」の記載があったので、デカドロンが、4mg錠と0.5mg錠の両方が処方されていると思い込み、調剤してしまった。
Rp1)デカドロン錠4mg
Rp2)デカドロン錠0.5mg
しかし、その後、再度処方せんを見直して間違いに気付き、正しく調剤し直した。
当薬局では、吐き気止めとしてデカドロン錠が度々処方される。デカドロン錠には、規格単位が4mgと0.5mgがあり、日頃から間違わないように規格単位を意識していたため、Rp1)のデカドロン錠4mgを調剤した後に、Rp2)の「デ」からはじまる薬剤名で0.5mgという規格単位を目にした時に、デカドロンだと思ってしまった。
当日は薬剤師の数が少なく焦っていたが、どんなに焦っていても、本剤に限らず規格単位のミスには注意しなければならないと気を張っていた。そのため、「デ」と「0.5」に反射的に反応してしまった。
処方せんにデカドロンとデパスが上下に記載されていた。これまで「デカドロン錠4mg+デカドロン錠0.5mg」のようにデカドロン錠の複数規格単位が同時処方されることはなかったので、その観点からも自分の思い込みの間違いを発見できなくてはいけなかったが、思い込みの方が強かった。
なお、昨年の夏あたりから門前の病院で、デパス錠の「0.25mg」の規格単位が採用されたため、既存の「0.5mg」と間違えないように、デパスでも規格単位に関しては特に注意していた。しかし、今回はデパスよりもデカドロンに対する意識が強かった分、デパスがデカドロンに見えてしまったと思われる。
薬名(商標・製剤・規格単位)に関して指さし呼称によって確認を徹底する。
デカドロン錠が複数規格単位で処方されているかどうかの確認を徹底する。
規格単位の間違いによる誤調剤は点眼液で頻発している。以下に代表的な事例を示す。
トルソプト点眼液(1%)とトルソプト点眼液(0.5%)を取り違え誤調剤
事例:60歳代の男性。
<処方1>(7月31日)
チモプトール点眼液(0.5%5mL) | 2本 1日2回 朝夕 1滴右目 |
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フルメトロン点眼液(0.1%5mL) | 2本 1日3回 朝昼夕 1滴右目 |
トルソプト点眼液(1%5mL) | 2本 1日3回 朝昼夕 1滴右目 |
<処方2>(8月16日)
トルソプト点眼液(1%5mL) | 2本 1日3回 朝昼夕 1滴右目 |
---|---|
フルメトロン点眼液(0.1%5mL) | 1本 1日3回 朝昼夕 1滴右目 |
処方せんにはトルソプト点眼液(1%)とあるが、トルソプト点眼液(0.5%)を調剤し、患者に交付してしまった。
7/31の処方1において、調剤棚(外用棚)の「トルソプト点眼液(0.5%)、トルソプト点眼液(1%)」とラベルされているカセットからトルソプト点眼液(0.5%)を取り出し、薬袋に入れた。調剤の鑑査においても処方せんと違う薬剤が調剤されていることに気がつかなかった。
患者は自宅に帰り、容器の色が異なっていることに気がついたが、そのまま全量を使用した。次の来局時(8/16)、投薬窓口において患者より「前回もらった容器の色が、前々回以前と違った」と申し出があった。
薬局から処方した医師へ報告したところ、特に治療上(効果及び有害作用)の問題はなかったとのことで、次回からは処方通りのトルソプト点眼液(1%)を使用するようにとのコメントがあった。薬剤師は患者に対してお詫びし、医師との協議の結果について説明した。また、薬局長が患者の自宅に伺い、再度お詫びした。
調剤した薬剤師、鑑査した薬剤師は、ともにそれまであまりトルソプト点眼液(0.5%)、トルソプト点眼液(1%)の調剤・鑑査をしたことがなかった。
スペースが限られていることもあり、トルソプト点眼液(0.5%)とトルソプト点眼液(1%)を調剤棚(外用棚)の同じカセットに配置していた。それにも関わらず、調剤した薬剤師はトルソプト点眼薬には規格単位が二種類(1%と0.5%)存在していることに考えが及んでおらず、最初に目に付いた方を取り上げた。
監査した薬剤師も、鑑査時に薬名のみを確認し、調剤した薬剤師と同様のミスを犯した。
処方1には0.1、0.5、1、5、2などの数字が入り乱れており、混乱する要因になったと考えられる。
澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。
薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。
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