Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例139

手書きの麻薬処方箋の「(8時」を「18時」と誤読

ヒヤリした!ハットした!

麻薬の処方であったが、別の事柄に気を取られてしまったために、正しくは1日2回(8時・20時)のところが誤って(18時・20時)と入力されていたことに気付かず、最終鑑査も通ってしまった。

<処方1>70歳代の女性。病院の外科。手書き。

記号付きの手書き処方箋

*「MSコンチン(5)2T2×(8、20)」の記載と思われる。
*最終的には「オキシコンチン(5)2T2×(8、20)」へ変更されている。

<効能効果>

●MSコンチン錠10mg・30mg・60mg
・激しい疼痛を伴う各種癌における鎮痛
●オキシコンチン錠5mg・10mg・20mg・40mg
・中等度から高度の疼痛を伴う各種癌における鎮痛

どうした?どうなった?

手書きの処方箋で<処方1>のように、今回初めてMSコンチン錠<モルヒネ硫酸塩水和物>の5mg錠が処方された。しかし、5mg錠は発売されておらず、薬局事務スタッフが処方内容をレセコンに入力する前に、医師から直接「MSコンチンではなく、オキシコンチン<オキシコドン塩酸塩水和物>の5mgに訂正してほしい。」と連絡があった。

連絡を受けて、調剤事務スタッフは正しくオキシコンチン錠5mgで入力したが、用法を1日2回(18時・20時)と入力してしまった。レセコンの入力内容をチェックする初期鑑査と、調剤、最終鑑査でも入力間違いに気付かず、そのまま投薬を始めてしまった。

投薬を担当した薬剤師が、処方箋と薬袋の記載を見ながら用法を患者に説明していたところ、薬袋の記載に誤りがあることに気付き、その後患者には正しく服薬説明を行った。

なぜ?

薬剤師は、オキシコンチンの用法が「1日2回12時間毎」であることを知っていながら、今回は投薬するまで入力間違いを発見することができなかった。初期鑑査では、MSコンチンがオキシコンチンに変更されたことに気を取られた状態で、オキシコンチンの時間指定が18時・20時と入力された帳票を先に見てしまったため、手書き処方箋の記載の「(8」が「18」に見えてしまい、レセコンに誤って入力されていたことに気が付かなかった。

ホットした!

薬剤師がレセコンの入力チェックをするときには、先に入力された帳票を見ると先入観が生じるため、必ず処方箋を確認してから、入力された帳票を見るように習慣づけられた。
薬局事務スタッフにも、オキシコンチンは12時間毎に服用する薬剤であることを周知徹底した。
薬袋の誤記載による患者の誤服用のリスクについて局内で検討し、調剤過誤に対して高いリスク意識をもつようになった。

もう一言

手書き処方箋で読み違えトラブルが起こった類似事例を以下に示す。

手書き処方箋を読み間違って半量を調剤

<処方2>50歳代の男性。内科クリニック。手書き。

記号付きの手書き処方箋

医師の処方意図は以下である。

<処方3>

セララ錠50mg 1T(錠) 1日1回 朝食後服用28日分
ノルバスク錠5mg 1T(錠) 1日1回 朝食後服用28日分

ノルバスク錠5mgのところを間違って2.5mg錠を調剤してしまい、そのまま交付しそうになった。
処方は手書きであった。「ノルバスク5mg」と書かれていたが、ノルバスクの「ク」が数字の「7」または「2」に見えた。更に、その後に「.」(ピリオド)がついていたため、間違って2.5 mg錠で調剤してしまった。即ち、実際には7.5mg錠は存在しないので、瞬間的に2.5mg錠と思い込んでしまった。

鑑査者も間違いを見逃し、服薬指導時に患者から「いつもと違う」と指摘され、間違いが発覚した。その後、医師の処方意図である5mg錠で正しく再調剤し、患者に交付した。

手書き処方箋で達筆であったため、判読が難しかったが、無理に思い込みで読み取ってしまった。
調剤時、鑑査時には薬歴をきちんと確認する必要があるが、今回はそれを実行しなかった。手書きなどで、一見、処方内容が判断できないと少しでも感じた場合には、前回処方などを確認する必要があった。

[参考]
Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例06 手書き処方せんを読み間違って半量を調剤

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2021年6月10日

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