Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例135

患者がカロナール錠を別の薬袋に入れたため過量に服用

ヒヤリした!ハットした!

患者は、別の薬袋に入っていたカロナール錠200<アセトアミノフェン>をノイロトロピン錠4単位<ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液>の薬袋に入れてしまい、1回1錠を1日3回のところ、1回2錠を1日2回で誤って過量に服用していた。

<処方1>80歳の女性。病院の整形外科。処方オーダリング。

カロナール錠200mg 3錠 1日3回 毎食後 28日分
カロナール錠300mg 3錠 1日3回 毎食後 28日分
ノイロトロピン錠4単位 4錠 1日2回 朝夕食後 28日分

<効能効果>

●カロナール錠200・300・500<アセトアミノフェン>
・頭痛、耳痛、症候性神経痛、腰痛症、筋肉痛、打撲痛、捻挫痛、月経痛、分娩後痛、がんによる疼痛、歯痛、歯科治療後の疼痛、変形性関節症の鎮痛
・急性上気道炎(急性気管支炎を伴う急性上気道炎を含む)の解熱・鎮痛
・小児科領域における解熱・鎮痛
●ノイロトロピン錠4単位<ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液>
・帯状疱疹後神経痛、腰痛症、頸肩腕症候群、肩関節周囲炎、変形性関節症

どうした?どうなった?

今回、初めて<処方1>が処方され、1日3回服用のカロナール錠200とカロナール錠300は同じ薬袋に入れて交付した。その際、外観が似ているため間違わないようにと、本人に丁寧に説明した。また、1日2回服用のノイロトロピン錠は別の薬袋に入れて交付した。
ところが、5日後に患者の夫より、「カロナール錠200の飲み方を教えてほしい。」と薬局に電話があった。状況を詳しく尋ねた。

患者の夫:「カロナール錠200がノイロトロピン錠と同じ薬袋に入っており、朝夕に2錠ずつ服用しているが、薬情の記載とは飲み方が異なる気がして、連絡した。カロナール錠200はノイロトロピン錠と同じ薬袋に最初から入っていたと本人は主張している。それに、カロナール錠200が余ってきている。」

なぜ?

投薬した薬剤師は、正しい薬袋(カロナール錠200とカロナール錠300を同じ薬袋)に入れて交付したことを覚えており、原因は不明であるが、患者がカロナール錠200を誤ってノイロトロピン錠の薬袋に戻してしまったと推測された。カロナール錠200とカロナール錠300を別々の薬袋に入れて交付しなかったことも原因だったかもしれない。
薬剤師は、投薬時の患者の様子からは、薬剤管理や服薬遵守に問題が生じる可能性があることを認識できなかった。患者は高齢であることから、一包化なども考慮するべきであったと考えられる。

ホットした!

特に高齢者に交付する場合、一見問題ないと思われても、薬剤の理解や管理が十分であるかを確認して、不安がある場合には、一包化や薬袋に大きく薬剤名・服用方法を記載するなど工夫する必要がある。
高齢者で長期処方されている場合などは、患者・家族の同意が得られれば、電話フォローアップするなどして服薬状況を確認することも必要であろう。

もう一言

処方がカロナール錠ではなく、ハイリスク薬のプレドニゾロン錠であれば、どうなるであろうか。プレドニン錠5mgをノイロトロピン錠の薬袋に間違って入れた場合、プレドニゾロンは正しくは6mg/日服用であるが、21mg/日と誤服薬してしまうことになり、危険である。

<処方2>

プレドニン錠5mg 1錠 1日1回 朝食後 28日分
プレドニゾロン錠1mg「旭化成」 1錠 1日1回 朝食後 28日分
ノイロトロピン錠4単位 4錠 1日2回 朝夕食後 28日分
澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2021年4月20日

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