Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例134

ムコスタ点眼液UDの副作用の説明不足

ヒヤリした!ハットした!

患者はドライアイのため、ムコスタ点眼液が処方された。次の日、患者から薬局に電話があり、「こんな目薬はさせない」と訴えた。点眼液の白い濁りで目の前が真っ白になること、1日4回の点眼で苦味が1日中続いていることなどの不快感を主張した。

<処方1>60歳代の女性。眼科クリニック。処方オーダリング。

ムコスタ点眼液UD2% 112本 1回1本 1日4回 両眼に点眼

<効能効果>

●ムコスタ点眼液UD2%<レバミピド>
ドライアイ

どうした?どうなった?

患者はドライアイのため、ムコスタ点眼液UD2%が処方された。次の日に患者から電話があった。詳細を確認すると以下が患者の主張であった。

患者:「点眼液は透明だと思っていたのに白く濁っており、点眼した瞬間、目の前が真っ白になったので、ビックリしてしまった。朝8時半頃点眼したが、1時間位経った頃に喉の奥がとても苦くなった。お茶を飲んだり、飴を食べたりして苦味を和らげようとし、苦味は減ったものの、1時間程度続き、苦味が消えた頃には次の点眼時間になってしまい、1日中苦味が続いている。昨日、112本ももらったが、もう使いたくない。」

そこで、医師に疑義照会を行った。

薬剤師:「患者が、点眼液を使うと目の前が真っ白になり、苦味があって使用したくないとのことです。薬剤師からの事前の説明が足りなかったと反省しておりますが、どういたしましょうか?」

医師:「あの患者は他の点眼薬では効果が無く、ムコスタ点眼液を処方したので、回数を減らしてでも使用継続する様に指導してください。」

用法が寝る前1回に減量となった。

<処方2>

ムコスタ点眼液UD2% 112本 1回1本 1日1回 寝る前に両眼に点眼

患者には、医師の説明をそのまま伝え、患者も納得した様子であった。

なぜ?

患者には、メーカーの患者用指導箋を渡し、点眼後に目がかすむことも、苦味が出る事も伝えていたが、その程度を具体的に伝えておらず、薬剤師もそのような状態になることを認識していなかった。
薬剤師は、ムコスタ点眼液が白濁液であることは認識していたが、薬剤師自身で使用経験がないためどの程度視界が白くなるかの認識はなかった。
点眼液は、鼻涙管を経由して鼻咽頭へ薬液が流れることがあるので、苦み等の副作用を一部防止するため点眼後は目を閉じ、1~5分間涙嚢部を圧迫することを伝えるべきであったが、そこまで指導していなかった。

ホットした!

特に外用剤は、使用のしづらさなどが要因となり、アドヒアランスが低下することが多々ある。新しい薬剤を採用した際には、製剤見本などをメーカーから取り寄せ、その性状を確認しておくべきであると考えられた。

ムコスタ点眼液UD2%の投薬時に説明しなければいけないポイントをチェックリストにまとめ、それをチェックしながら、投薬、服薬指導するようにした。
1)主薬は水に殆ど溶けないので、水性懸濁剤となっており白濁している。これで臨床試験が行われ有効性が得られている。保管の仕方によっては振り混ぜても粒子が分散しにくくなる場合があるので、点眼口を上向きにして保管すること(下向きに保管すると粒子が分散しにくくなる場合がある)。
2)点眼後、閉瞼して1~5分間涙嚢部を圧迫した後、開瞼すること。これにより苦味などの副作用を防ぐことができる。眼周囲等に流出した液は拭きとること。
3)二次汚染防止の保存剤を含有しない、1回使い捨ての無菌ディスポーザブルタイプの製剤なので、使用後の残液は廃棄すること(次回以降に使用しない)。
4)他の点眼剤と併用する場合には、少なくとも5分間以上の間隔をあけて点眼すること。

もう一言

国内臨床試験(安全性解析対象症例670例)において、主な副作用は、苦味105例(15.7%)、眼刺激感17例(2.5%)、眼そう痒15例(2.2%)、霧視8例(1.2%)等であった(インタビューフォームより)。

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2021年3月08日

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