アロマシン錠に関しての患者の理解度の確認不足
患者は病院で化学療法として乳癌治療の点滴を受けていた。外来で処方されたアロマシン錠<エキセメスタン>が乳癌治療の薬だと認識せず、服用していなかった。
<処方>50歳代の女性。病院の内科。処方オーダリング。
アロマシン錠25mg | 1錠 1日1回 朝食後 |
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ネキシウムカプセル10mg | 1Cap 1日1回 朝食後 |
PL配合顆粒 | 3g 1日3回 毎食後 |
<効能効果>
●アロマシン錠25mg<エキセメスタン>
閉経後乳癌
患者には<処方>が以前から交付されており、今回もその継続であった。今回、受付時に、患者は「PL配合顆粒以外の薬は飲んでいないから残っている。PL配合顆粒のみ欲しい。」と述べた。
薬剤師は、アロマシン錠は患者にとって重要にも関わらず残薬があるのを不審に思い、「アロマシンは乳癌の薬ですが、服用していないのですか?」と質問したところ、患者は、「乳癌は病院で点滴をしているので大丈夫。体調に変化ない。だから錠剤は飲んでいない。」と回答した。
薬剤師は再度、アロマシン錠などの薬効を説明し、症状がなくてもしっかりと服用するよう指導したところ、患者が錠剤は乳癌治療と関係ないと思っていたことが判明した。
患者は、アロマシンを何の薬かわかっておらず、体調に変化がないため服用していなかったようである。
薬剤師は、乳癌の薬は患者にとっては重要な薬のはずなので、正しく認識できていると思い込んでいた。
アロマシンが最初に処方された時にはしっかり説明をしたはずだが、その後、投薬時には体調の変化のみを確認し、薬効に対しフォローが出来ていなかった。
患者にとって重要な疾患の薬であっても、薬剤師が考えているほど患者には自覚がないことが多いのかもしれない。薬効に関して、繰り返し説明し患者の納得を得る必要があり、さらに一方的な薬剤師からの情報提供ではなく、患者の理解度、意見、不安点などを患者の口から収集する必要がある。
アロマシン錠は非可逆的なアロマターゼ阻害薬である。アロマターゼの基質結合部位に対して、本来の基質であるアンドロゲンと競合的かつ非可逆的に結合してアロマターゼを不活性化する。
抗エストロゲン剤耐性の閉経後進行・再発乳癌患者に対し、経口投与で優れた抗腫瘍効果を示した。国内の後期第Ⅱ相臨床試験における抗エストロゲン剤耐性の閉経後進行・再発乳癌患者に対するエキセメスタン25mg1日1回の経口投与で、奏効率24.2%(8/33)、長期不変(24週以上の不変持続)を含む有効率39.4%(13/33)を示した。
(渡辺亨ほか:癌と化学療法29:1211,2002.)
澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。
薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。
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