Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例127

OTC医薬品のアセトアミノフェンで薬疹が出た患者へのカロナール錠の処方を疑義照会

ヒヤリした!ハットした!

患者は過去にOTC医薬品のアセトアミノフェンで薬疹が起こったことがあるが、今回、カロナール錠が処方されていた。
医師は、患者からOTC医薬品の小児用バファリンチュアブルによる薬疹歴を聞き出したが、当該OTC医薬品の主成分はアセチルサリチル酸<アスピリン>であると思い込んでおり、カロナール錠の処方は問題ないと判断していた。

<処方>14歳の女性。病院の耳鼻咽喉科。処方オーダリング。

カロナール錠200 3錠 1日3回 毎食後5日分
フロモックス錠75mg 3錠 1日3回 毎食後5日分

<効能効果>

●カロナール錠200・300・500<アセトアミノフェン>
頭痛、耳痛、症候性神経痛、腰痛症、筋肉痛、打撲痛、捻挫痛、月経痛、分娩後痛、がんによる疼痛、歯痛、歯科治療後の疼痛、変形性関節症の鎮痛
急性上気道炎(急性気管支炎を伴う急性上気道炎を含む)の解熱・鎮痛
小児科領域における解熱・鎮痛

●小児用バファリンチュアブル<アセトアミノフェン>
悪寒・発熱時の解熱
歯痛・抜歯後の疼痛・頭痛・打撲痛・咽喉痛・耳痛・関節痛・神経痛・腰痛・筋肉痛・肩こり痛・骨折痛・ねんざ痛・月経痛(生理痛)・外傷痛の鎮痛

どうした?どうなった?

患者は外耳炎のため病院の耳鼻咽喉科を受診した後に来局した。初めて来局した患者であったので、薬剤師が初回インタビューしたところ、OTC医薬品の小児用バファリンチュアブルを服用すると必ず鼻の下に固定薬疹ができることが判明した。
医師にも同じことを言ったそうだが、カロナール錠200が処方されていたため、疑義照会を行った。

薬剤師:「患者はOTCの小児用バファリンチュアブルを服用すると、必ず湿疹がでるとのことです。カロナールを変更して頂けないでしょうか?」
医師:「バファリンは処方していないです。そのままでお願いします。」
薬剤師:「患者さんが服用したOTC医薬品の小児用バファリンチュアブルはアセトアミノフェンが成分ですので、今回処方されたカロナールと同じです。」
医師:「それは知りませんでした。ではカロナールはなしでお願いします。」

なぜ?

医師は、OTC医薬品の小児用バファリンチュアブルの成分をアスピリン(アセチルサリチル酸)だと勘違いしていた。“小児用バファリン”という名前から、血栓予防のアスピリンを思い浮かべたのかもしれない。
以前は、医療用医薬品の“小児用バファリン”<アスピリン・ダイアルミネート>が、狭心症や心筋梗塞を防ぐために成人にも使われていた(現在は抗血小板薬として承認され、バファリン配合錠A81に販売名が変更されている)。医師は高齢なので、この事が頭に浮かんだのかもしれない。
この誤解は、医師ばかりでなく患者・家族においても発生しており、注意が必要である。

ホットした!

医師は、OTC医薬品の成分まで正確に把握しているわけではないので、薬剤師がもれなく処方チェックを行う必要がある。また、患者が使用しているOTC医薬品と、それによる副作用歴もしっかり聴取する必要がある。

もう一言

ブランド名としてバファリンを使用している主なOTC医薬品の解熱鎮痛成分を以下にまとめた。アスピリンやイブプロフェン、ロキソプロフェンを含むものもあるので、OTC医薬品のバファリン=アセトアミノフェンと思い込むのも一方でまた危険である。

商品名 主な成分/1回分の含量
バファリンプレミアム イブプロフェン/130mg、アセトアミノフェン/130mg
バファリンEX ロキソプロフェンナトリウム/60mg
バファリンA アスピリン/660mg
バファリンライト アスピリン/440mg
バファリンルナi イブプロフェン/130mg、アセトアミノフェン/130mg
バファリンルナJ アセトアミノフェン/200mg(11~15歳の場合)
小児用バファリンCII アセトアミノフェン/198mg(11~15歳の場合)
小児用バファリンチュアブル アセトアミノフェン/200mg(11~15歳の場合)
澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2020年12月16日

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