一包化調剤後の予製から抜くべき炭酸リチウム錠を取り違え
炭酸リチウム100「ヨシトミ」や炭酸リチウム200「ヨシトミ」などが一包化調剤された予製から、前者を取り除くときに間違って後者を抜いてしまった。両剤が極めて類似した錠剤であったことが原因であった。
<処方1>50歳代の女性。病院の心療内科。処方オーダリング。[前回処方]
ジェイゾロフト錠50mg | 2錠 1日1回 夕食後28日分 |
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炭酸リチウム錠200「ヨシトミ」 | 2錠 1日1回 朝夕食後28日分 |
炭酸リチウム錠100「ヨシトミ」 | 2錠 1日1回 朝夕食後28日分 |
<処方2>[今回処方]
ジェイゾロフト錠50mg | 2錠 1日1回 夕食後28日分 |
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炭酸リチウム錠200「ヨシトミ」 | 2錠 1日1回 朝夕食後28日分 |
<効能効果>
●炭酸リチウム錠100「ヨシトミ」・炭酸リチウム錠200「ヨシトミ」
躁病および躁うつ病の躁状態
前回の処方1から処方2へ変更があった。一包化指示があり、処方1は予製されていた。患者を待たせた状況で予製の袋から作り変えていた時、炭酸リチウム100「ヨシトミ」を抜くところ、56包中2包においては炭酸リチウム200「ヨシトミ」を抜いてしまった。
両剤ともに白色で大変見分けがつきにくく、大きさも200mg錠が若干大きいだけであった。
100mg錠 | 200mg錠 | |
---|---|---|
直径(mm) | 8.1 | 9.1 |
厚さ(mm) | 3.6 | 4.5 |
重量(mg) | 206 | 184 |
更に、刻印も白に白抜きで見分けがつきにくく、片面は“Y”で同じであり、もう片面が“LI100”、“LI200”と“100”と“200”が違うだけであった。
分包機のマスの中に複数の他の錠剤も入っている状態で、両規格の錠剤を区別する作業は大変骨の折れるものだった。
調剤の都合で100mg錠と200mg錠の規格を相違したメーカーに切り替えることも考えられるが、患者の混乱を招く可能性がある(当薬局では在庫管理の関係で、複数メーカーの規格単位を揃えることはできない)。
本事例の様な“一包化後の薬剤抜き”に関してのヒヤリとした類似例を収集し、薬局内で情報共有する。
規格単位違いの錠剤は別の色にするなど、判別可能となるようにメーカーに要請する。
他のメーカーの炭酸リチウム錠の識別コード、大きさなどを一覧にまとめた。
薬品名 | 剤形 | 識別コード | 直径 (mm) |
厚み (mm) |
重量 (mg) |
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リーマス錠100 | 白色~淡黄白色のフィルムコーティング錠 | T702 | 8 | 3.3 | 206 |
リーマス錠200 | T703 | 9 | 4.3 | 295 | |
炭酸リチウム錠100mg「フジナガ」 | 白色のフィルムコーティング錠 | ◇L1 | 7.0 | 3.2 | 154 |
炭酸リチウム錠200mg「フジナガ」 | ◇L2 | 8.5 | 4.6 | 306 | |
炭酸リチウム錠100mg「アメル」 | 白色のフィルムコーティング錠 | KW370/100 | 8.1 | 3.6 | 206 |
炭酸リチウム錠200mg「アメル」 | KW371/200 | 9.1 | 4.5 | 284 |
澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。
薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。
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