ジヒドロコデインリン酸塩とコデインリン酸塩の力価が同じだと勘違い
ジヒドロコデインリン酸塩散1%からコデインリン酸塩散1%への変更時、等価計算を間違い、コデインリン酸塩散1%の分量を半分にしてしまった。
<処方1>40歳代の男性。内科。処方オーダリング。
ジヒドロコデインリン酸塩散1%「第一三共」 3g | 1日3回 毎食後7日分 |
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<処方2>
コデインリン酸塩散1%「第一三共」 6g | 1日3回 毎食後7日分 |
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<効能効果>
●ジヒドロコデインリン酸塩散1%「第一三共」<ジヒドロコデインリン酸塩>
●コデインリン酸塩散1%「第一三共」<コデインリン酸塩水和物>
・各種呼吸器疾患における鎮咳・鎮静
・疼痛時における鎮痛
・激しい下痢症状の改善
<処方1>を受けたが、薬局でジヒドロコデインリン酸塩の取り扱いがなかったので、医師に疑義照会した。
その際、ジヒドロコデインリン酸塩とコデインリン酸塩の力価が同じと思い込み、薬局で在庫のあったコデインリン酸塩散1%「3g」に変更依頼した。医師も3gで良いと回答したため、コデインリン酸塩散1%「3g」で調剤した。
しかし、鑑査時に力価を等価にするためには「ジヒドロコデインリン酸塩1%3g=コデインリン酸塩散1%6g」であることが発覚したため、再度、疑義照会し<処方2>に変更となった。
両剤の用法用量は以下である。
●ジヒドロコデインリン酸塩散1%「第一三共」
通常、成人には、1回1g、1日3gを経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
●コデインリン酸塩散1%「第一三共」
通常、成人には、1回2g、1日6gを経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
規格単位の1%が同じであることもあり、両薬剤の力価が同じだと思い込んでしまった。
基本的なことであるが、ジヒドロコデイン、コデイン、モルヒネ間の力価に関してまとめた表を作成し、薬局内で共有した。
ジヒドロコデインリン酸塩はオピオイド受容体に結合する。鎮痛作用はモルヒネの約1/3、コデインリン酸塩水和物の約2倍で、精神機能抑制作用、催眠作用及び呼吸抑制作用はモルヒネの約1/4で、コデインリン酸塩水和物と同等といわれる。鎮咳作用はコデインリン酸塩水和物の約1.4倍強力である。
(ジヒドロコデインリン酸塩散1%「第一三共」の医薬品インタビューフォームより)
澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。
薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。
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