Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例100

ムコソルバンとメプチンの混合薬の色が以前と違う?配合変化による変色の認識不足

ヒヤリした!ハットした!

喘息の薬を交付した患児の母親が薬剤を持って来局し、「前回もらった薬は、ムコソルバン<アンブロキソール>とメプチン<プロカテロール>が混ざったもののはずだが、オノン<プランルカスト>が入っていた。つまり両方ともオノンであった。」と訴えた。

<処方>4歳の女児。病院の小児科。

1)オノンドライシロップ10% 120mg 1日2回 朝食後と寝る前 28日分
2)小児用ムコソルバンDS1.5% 17mg
メプチンドライシロップ0.005% 45µg 1日2回 朝食後と寝る前 28日分
他に吸入剤処方あり

*製剤の色
オノンドライシロップ10%:白色~微黄色
小児用ムコソルバンDS1.5%:白色~微黄色
メプチンドライシロップ0.005%:白色

<効能効果>

●オノンドライシロップ10%<プランルカスト水和物>
気管支喘息、アレルギー性鼻炎

●小児用ムコソルバンDS1.5%<アンブロキソール塩酸塩>
下記疾患の去痰
急性気管支炎、気管支喘息

●メプチンドライシロップ0.005%<プロカテロール塩酸塩水和物>
下記疾患の気道閉塞性障害に基づく呼吸困難など諸症状の緩解
気管支喘息、慢性気管支炎、肺気腫、急性気管支炎、喘息様気管支炎

どうした?どうなった?

患児の母親は、今回新しく交付されたムコソルバンとメプチンの混合薬(白色に見えた)と、前回に交付済みでこの1ヶ月服用させていたムコソルバンとメプチンの混合薬(微黄色に見えた)とを見比べると色が全く異なり、前回に交付された混合薬が、同時に交付されていたオノン(微黄色に見えた)に色や外観がそっくりであることに気付いた。母親はすでに1ヵ月服用させてしまったが、薬局が誤調剤して両方ともオノンを交付したのではないかと心配になり、薬剤を持参し来局した。

対応した薬剤師が確認したところ、前回交付した混合薬の色とオノンの色は両剤ともほとんど同じ色(微黄色)であったが、ドライシロップの粒の形状が異なることから、前回の分の混合薬はオノンでないことが推測できた(散剤の調剤録からも間違いないことを確認した)。

これを見ていた他の薬剤師より、ムコソルバンDSとメプチンドライシロップの組み合わせでは、配合変化による変色が起きることがあるとの情報を初めて得た。
母親には、誤調剤の可能性はないと説明し、更に、変色の理由を説明した。母親は変色が気になるということで、小児用ムコソルバンDSとメプチンドライシロップは別包にして再交付した。
薬剤師は、医師に事の顛末を口頭にて報告した。

なぜ?

ムコソルバンDSとメプチンドライシロップの配合により変色が起きることを、対応した薬剤師は把握していなかった。
同薬局で配合変化を把握していた薬剤師は、薬局内での情報共有及び交付時患者への情報提供を怠った。

ホットした!

特に薬局内で高頻度に応需する薬剤の配合変化に関して情報を共有し、医師及び患者にも情報提供を行う。

もう一言

メーカーの配合試験において、ムコソルバンDS0.26gとメプチンドライシロップ0.325gを混合してグラシン紙で分包し、25℃、60%の環境下で保存した時、30日目のプロカテロールの含有量は98.5%と規格内であったが、色がわずかに微黄白色を帯びたことが示されている(メプチンの医薬品インタビューフォーム、2018年8月改訂(第17版)、p.80-81)。
メプチンドライシロップには添加物としてアスコルビン酸が含まれており、そのために着色するのではないかと考えられている(メーカー回答)。

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2019年9月20日

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