Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例98

異なるPTPシートによる数量の誤調剤

ヒヤリした!ハットした!

プロマックD錠<ポラプレジンク>が処方され、全60錠(10錠PTPシート×6枚)を調剤すべきところ、全84錠(14錠PTPシート×6枚)を誤調剤してしまった。

<処方>70歳の女性。病院の外科。処方オーダリング。

プロマックD錠75 2錠 1日2回 朝夕食後 30日分

<効能効果>

●プロマックD錠<ポラプレジンク>
胃潰瘍

どうした?どうなった?

薬局店舗Aとその近隣にある薬局店舗Bは同じ系列のグループ薬局である。薬局店舗AではプロマックD錠は14錠PTPシートを採用していた。一方、薬局店舗BではプロマックD錠は10錠PTPシートを採用している。

薬剤師Yは、最近、薬局店舗Bから薬局店舗Aへ異動したばかりで、PTPシートの違いに気付かず、14錠PTPシートを10錠PTPシートだと思い込み、誤集薬してしまった。

なぜ?

調剤時、PTPシートの1シートあたりの錠数をしっかり確認しなかった。
同じ系列の近隣のグループ薬局であり、採用されている薬剤のPTP包装(1シート錠数など)は同じであると思い込んでいた。

ホットした!

今後の具体的対策としては以下が考えられる。
(1)1枚のPTPシートの錠数など、様々な規格が存在することを認識し、薬剤の1シート当たりの錠数をしっかり確認する習慣をつける。
(2)PTPシートの全自動調剤システム(処方箋から処方データを読み込み、PTPシートを自動で調剤する機器)、監査支援システム(調剤されたPTPシートをバーコードや画像から自動識別し、数量を重量や画像から自動認識し、処方データと齟齬があればアラートを出す機器)を使用する。

もう一言

上記の事例のように10錠シートを14錠シートと、逆に14錠シートを10錠シートと思い込んで、計数にトラブルが発生したとの報告は極めて多い。さらに、事例数は少ないが、8錠シートと10錠シートを取り違えた事例も報告されている。以下に1事例を示す。

事例:70歳代の男性患者。薬剤交付時にザイティガ錠250mgの在庫が44錠不足していたため、患者宅に郵送した。

後日、送られてきた数が2日分(8錠)少なく、翌日に服用する分がないと患者から電話があったが、受電が薬局の定休日である日曜日だったため、薬剤師は在庫などの確認ができなかった。患者は翌日に受診予定で、翌日の服用でも間に合うため、来局時に対応することとした。

理論在庫より実在庫が8錠多く、患者に8錠少なく郵送していたことが判明。来局時に不足分を交付し、服用は間に合った。ザイティガ錠は1シート8錠だが薬剤師は1シート10錠だと思い、44錠(10錠×4シート+4錠=44錠)と考えて実際には36錠(8錠×4シート+4錠=36錠)しか郵送していなかった。従って8錠少なかったことになる。正しくは、44錠(8錠×5シート+4錠=44錠)である。

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2019年8月6日

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