Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例84

誤解を招く含嗽液の患者指導箋のイラストを用いた服薬指導

ヒヤリした!ハットした!

ポピヨドンガーグル7%<ポビドンヨード>の患者指導箋が、患者に誤解を与えるような記載内容(イラストで記載の滴数と用量の不一致)であるのに薬剤師が気づかなかった。

<処方>70歳代後半の男性。病院の内科。処方オーダリング。

ポピヨドンガーグル7% 30mL 1日数回うがい
その他内服薬数種

<効能効果>

●ポピヨドンガーグル7%<ポビドンヨード>
咽頭炎、扁桃炎、口内炎、抜歯創を含む口腔創傷の感染予防、口腔内の消毒。

どうした?どうなった?

高齢患者にポピヨドンガーグル7%の指導箋を見てもらいながら使用方法を説明していた時に、患者から「これは2滴いれるんだね」といわれてしまった。
患者指導せんのイラスト(下図イメージ)をみると、2滴を滴下している図になっているのに気づき、すぐに「そうではなくて、1~2目盛り分を入れてください。」と説明し、指導箋の「2滴の図」に×をいれ、説明部分を○で囲んで患者に手渡した(高齢者なので口頭だけでは忘れてしまう可能性があるため)。

含嗽剤 ポピヨドンガーグル7%の使用方法の解説イメージ。ボトルから2滴が落ちていることがわかる。(ヨシダ製薬のパンフレットを参考に作図) 画像

図.含嗽剤 ポピヨドンガーグル7%の使用方法の解説イメージ。ボトルから2滴が落ちていることがわかる。

(ヨシダ製薬のパンフレットを参考に作図)

今回は薬局カウンターでの説明を行ったので、その時点で患者の誤認識が明らかとなったが、特に口頭での説明を行わず、指導箋と薬剤を交付した場合、自宅で指導箋を見た患者が過少量使用してしまう可能性がある。

なぜ?

イラストの下に1目盛りを入れる様に説明書きがあるが、字が小さく、高齢者にはその上の「2滴」のイラストが印象に残ったものと思われる。

ホットした!

服薬指導時に指導箋(特に外用剤)を使用することが多いが、内容を良く吟味して使用する必要がある。今回の事例を経験したことから、使用前には指導箋の記載に患者の誤解を招くような文言やイラストがないか確認することにした。もし、指導箋に問題ある記載を発見した場合には、口頭での補足説明を実施すると同時に、わかりやすいメモを記載したり、チェックマークを入れたりする。

もう一言

類似事例:70歳代の女性。イソジンガーグル液7%が処方された。患者から使い方(希釈法など)を理解していると話があったが、よく聞いてみると、1回2~4滴を水に溶かして使用していた。濃度としては相当低く、不適正な使用である。1回2~4mLを溶かしてうがいをするように確認した。原因は、2~4mLと2~4滴で数字が同じであり、mLでなく滴と思い込んだ可能性がある。

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2019年1月16日

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