Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例80

不動在庫となり脱色していたメキシチールカプセル

ヒヤリした!ハットした!

メキシチールカプセル<メキシレチン塩酸塩>100mgが著しく脱色していたのに気づかず、一包化しようとした。

<処方1>70歳代の男性。病院の循環器内科。処方オーダリング。

メキシチールカプセル100mg 3Cap 1日3回 毎食後服用 14日分
他6種類、一包化指示

<効能効果>

●メキシチールカプセル50mg・100mg(メキシレチン塩酸塩)
1.頻脈性不整脈(心室性)
2.糖尿病性神経障害に伴う自覚症状(自発痛、しびれ感)の改善

どうした?どうなった?

患者は、不整脈検査の結果、今回よりメキシチールカプセル100mgが追加処方となった。

患者の処方箋を受け付けた薬局では、半年前からメキシチールを処方されている対象者がいなくなったため、不動在庫となっていた。また、メキシチールの貯法は気密容器、遮光保存となっているが、他の薬剤と同様にPTPシートを束ねた状態で調剤室の薬品棚に入れて保管していた。調剤室は空調コントロール下にあり、極端な温度変化はなく、また室内に直射日光の入光はない状態であった。

今回の処方箋を受けて集薬したが、一包化調剤を行っている途中で、薬剤師はカプセルの著しい脱色に気がついた。そこで、調剤を途中で中止し、新しいロットのカプセルを用いて再調剤を行ったため、患者へは脱色した製剤は交付されていない。

なぜ?

遮光保存が必要な製剤を薬品棚で長期間保存していた。また、集薬の際、カプセルの脱色に気がつかなかった。

ホットした!

製剤の保管条件を見直し、遮光保存が必要な製剤は個装箱から出さないように心掛け、可能であれば引き出しに保管する。処方頻度の高い薬については色調の変化を見逃す恐れもあり、積極的な情報収集に努める。

また、変色・脱色した薬は医薬品成分自体に影響がない場合でも、患者の心情を配慮して調剤から除外する。

もう一言

[メキシチールカプセルの各種条件下における安定性]
保存状態が「PTP(ポリ塩化ビニルフィルム/アルミ箔)、紙箱」における結果
・40℃、暗所で12ヵ月保存では、変化は認められなかった。
・60℃、暗所で6ヵ月保存では、変化は認められなかった。
・キセノンランプ光照射(屋外曝光4週間相当)では、カプセルの退色が認められた。しかし、外観以外はほとんど変化を認めず、内容物は安定であった。

(メキシチールカプセルの医薬品インタビューフォーム、2014年11月、改訂第9版、p.5より)

※医薬品の効能・効果、用法・用量、使用上の注意等の詳細につきましては、各製品の最新の添付文書をご参照ください。

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2018年11月5日

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