アフタゾロン口腔用軟膏が流れないよう嚥下を我慢…誤解を招いた服薬指導
患者から、「軟膏を口腔内(舌の先の口内炎)に塗ったら、唾液がでて困った」と言われた。その原因は、自己判断で20~30分間口を閉じない、飲み込まないでいたことによると思われた。
<処方>60歳代の女性。クリニックの内科。処方オーダリング。
アフタゾロン口腔用軟膏0.1% | 3g 1本 |
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<効能効果・用法用量>
●アフタゾロン口腔用軟膏0.1%(デキサメタゾン)
びらん又は潰瘍を伴う難治性口内炎及び舌炎
通常、適量を1日1~数回患部に塗布する。なお、症状により適宜増減する。
患者は、舌の先に口内炎ができたためクリニックを受診し、アフタゾロン口腔用軟膏<デキサメタドン>が処方された。
薬剤師は患者に、軟膏が流れてしまう可能性があるので、塗布後しばらくは飲食しないように説明し、交付した。
次の来局時に、患者は、軟膏が流れてしまってはいけないと思い、嚥下してはいけないと考えて、舌に塗布後、自己判断で20~30分間口を閉じない、飲み込まないでいたことが判明した。その時、唾液が多量に出て困ったと述べた。
薬剤師による服薬指導の際に、軟膏が流れる可能性をあまりにも強調しすぎたため、患者は嚥下してはいけないと誤解してしまった。また、塗布した後は口を閉じても良いことや、飲み込んでも問題ないことをきちんと伝えていなかった。
口腔内用軟膏の服薬指導後に、使用法などを患者が正しく理解できているか確認する必要がある。
<製剤の物性>
健常人被験者6名の口腔内に本剤をそれぞれ塗布し、検出できなくなるまでの時間を記録した結果、口腔内に対する付着時間は1.49時間であったことが報告されている。
(アフタゾロン口腔用軟膏の医薬品インタビューフォーム,2016年1月改訂,第9版,p.5より)
<基剤の特性>
本剤の基剤は、口腔内の特殊性(常に唾液により湿潤していること、可動部が多いこと、咀嚼などによる粘膜面の機械的自浄作用が強いことなど)を考慮して、湿潤粘膜に対する付着性と口腔内滞留性が付与されている。本剤の局所塗布により患部をスムースな被膜で長時間保護すると共にデキサメタゾンの効果を助長する。
(アフタゾロン口腔用軟膏の医療用添付文書,2016年1月改訂,第6版より)
※医薬品の効能・効果、用法・用量、使用上の注意等の詳細につきましては、各製品の最新の添付文書をご参照ください。
澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。
薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。
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