Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例72

共通点の多いキプレスとケタスを医師が誤処方!

ヒヤリした!ハットした!

医師は、キプレスOD錠10mg<モンテルカスト>を選択すべきところ、勘違いしてケタスカプセル10mg<イブジラスト>を誤処方していた。

<処方>60歳代の女性、病院の呼吸器内科、オーダリング/印字処方

ケタスカプセル10mg 1Cap 1日1回 夕食後 14日分
シムビコートタービュヘイラー60吸入 1本 1日2回 1回2吸入

<効能効果>

●ケタスカプセル10mg<イブジラスト>
気管支喘息、脳梗塞後遺症に伴う慢性脳循環障害によるめまいの改善
●キプレスOD錠10mg<モンテルカスト>
気管支喘息、アレルギー性鼻炎

どうした?どうなった?

患者は軽い喘息を罹患している新患であった。調剤した薬剤師は、ケタスが1日1回夕食後の処方であったため(気管支喘息の場合、通常1回10mgを1日2回経口投与)、患者に症状を確認したところ、夜だけ咳がでるという回答であった。そのため、鑑査する薬剤師にその旨を申し送って、処方せん通りに調剤した。
鑑査した薬剤師は、この医師は喘息治療にケタスを第一選択薬として処方することは通常なく(キプレス錠を繁用している)、また、夜だけの咳とはいえ、ケタスが1日1回で処方されていることに違和感があった。そこで、確認のため疑義照会をしたところ、医師はキプレス錠10mgを処方したつもりでいたことが判明した。

なぜ?

医師は、ケタスカプセル10mgとキプレス錠10mgの商標名を取り違えてしまった。どちらも気管支喘息に適応がある薬剤であること、語頭が「カ行」であること、語尾が「ス」であること、規格単位が10mgであること、製造販売元が同じであることなどの共通点がある。

ホットした!

添付文書の用法用量を逸脱している処方(ケタスカプセルは、気管支喘息の場合1日2回投与である)に関しては、疑義照会する必要がある。
普段から可能な範囲で医師の処方傾向を把握しておくことも必要である。今回のようなミスを見つけることができるし、何より医師の処方意図に沿った個々の患者に合った服薬指導を行うこができると考えられる。

もう一言

東京大学大学院薬学研究科育薬学講座(澤田康文研究室)では、医薬品の薬名がどの程度似ているかを定量的に評価するための指標として、「vwhtfrag」という指標を開発している(薬学雑誌 126(5): 349-356, 2006)。実際に取り違えた医薬品名の組み合わせと、ランダムに作成した組み合わせを用いた検討により、「vwhtfrag」の値が0.28よりも大きいと取り違えが生じる可能性が高いと予測できる。
本事例の薬名では、『ケタス』と『キプレス』のvwhtfragの値は0.2429であり、薬名はあまり似ていないと判断される。したがって、それ以外の要因(適応症、規格単位、製造販売元などの一致)の影響が大きいと考えられる。

※医薬品の効能・効果、用法・用量、使用上の注意等の詳細につきましては、各製品の最新の添付文書をご参照ください。

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2018年7月3日

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