チアトンカプセル 10mgをチガソンカプセル 10mgと思いこんで誤調剤
チアトンカプセル 10mg<チキジウム臭化物>のところ、チガソンカプセル 10<エトレチナート>だと思い込んで調剤してしまった。
<処方>50歳代の男性。病院の消化器内科。処方オーダリング。
チアトンカプセル 10mg | 3Cap 1日3回 毎食後 14日分 |
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リンデロン-VG クリーム 0.12%(5g) | 1本 1日数回 患部に塗布 |
<効能効果>
●チアトンカプセル5mg/チアトンカプセル10mg
下記疾患における痙攣並びに運動機能亢進
胃炎、胃・十二指腸潰瘍、腸炎、過敏性大腸症候群、胆のう・胆道疾患、尿路結石症
●チガソンカプセル10/チガソンカプセル25
諸治療が無効かつ重症な下記疾患
乾癬群(尋常性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症、関節症性乾癬)、魚鱗癬群(尋常性魚鱗癬、水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症、非水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症)、掌蹠角化症、ダリエー病、掌蹠膿疱症、毛孔性紅色粃糠疹及び紅斑性角化症、口腔白板症、口腔乳頭腫及び口腔扁平苔癬
消化器内科よりチアトンカプセル 10mgとリンデロン-VGクリームの2剤が処方されていた。調剤した薬剤師は、クリーム剤が処方されているのを見て皮膚科の処方であるとの先入観を持ち、チアトンカプセルと医薬品名が類似しているチガソンカプセル10が併用薬だと思い込み、調剤してしまった。調剤薬鑑査を担当した薬剤師が誤調剤を発見し、事なきを得た。
1.薬名の類似性
商標である「チアトン」と「チガソン」が類似していた。さらに、ともに剤形が「カプセル」であり、規格単位が「10」mgと同じであった。
2.薬と診療科の関係
併用薬がクリーム剤であったため、皮膚科領域で使用される「チガソン」を連想してしまった。すなわち、調剤した薬剤師は処方箋の診療科(消化器内科)の確認がおろそかになっていたと考えられる。
・思い込みで調剤せず、調剤手順を遵守し、医薬品名・剤形・規格を1文字ずつ確認しながら自己鑑査をする。
・調剤時、処方された診療科の確認と、処方内容の妥当性の確認(今回は消化器内科の処方であり、チガソンカプセルが処方される可能性は低い)を怠らない。
・類似薬名リストを作成し、周知徹底する。
・「調剤過誤防止システム」(医薬品などのバーコードを専用端末で読み込んで処方情報と照合し、別物調剤を防止するシステム)を採用する。
「チアトン」と「チガソン」の類似度
薬名の類似度を数値的に表す指標として、東京大学大学院薬学系研究科・育薬学講座などでは「m2-vwhtfrag」を開発している。この指標によると、「チアトン」と「チガソン」の類似度は0.8313と計算される。m2-vwhtfrag値が0.456よりも大きいと、薬名類似により医薬品の取り違えが生じる可能性が高いと予測される。
「ルクライ」薬名類似度検索システムの詳細はこちら
澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。
薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。
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