薬ではなくサプリメントの服用を継続!不十分だった服薬指導
コロネル細粒 83.3%が初めて処方された患者に、相互作用回避の観点から、多量のカルシウム剤を服用しないように伝えた。患者は処方とは別にサプリメントのカルシウム剤を服用しており、コロネル細粒の方を服用しなかった。
<処方>40歳代の男性。病院の内科。処方オーダリング。
コロネル細粒 83.3% | 3.0g 1日3回 朝昼夕食後 56日分 |
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<効能効果>
過敏性腸症候群における便通異常(下痢、便秘)及び消化器症状
患者インタビューにおいて、患者はアスレティックジムに通っており、サプリメントとしてカルシウム剤を服用していることがわかった。
コロネル細粒はカルシウム剤と併用注意([もう一言]参照)となっているため、薬剤師は、多量のカルシウム剤を服用しないように患者に伝えた。また、併用すると、高カルシウム血症の副作用が発現することも説明した。
しかし、患者が次に来局した際にインタビューしたところ、高カルシウム血症の副作用を恐れ、カルシウム剤の摂取を続け、コロネル細粒を服用していなかったことが判明した。コロネル細粒を服用していなかったため、下痢は改善していない。
薬剤師は、服薬指導が不十分だったと考え、カルシウム剤は服用せずにコロネル細粒を服用し、現在の症状を治療するように再度丁寧に指導した。
薬剤師は、最初の服薬指導において、カルシウム剤やビタミンDを含有するサプリメントと併用すると、高カルシウム血症が起こる可能性があると話した。また、初期症状として悪心、吐き気、多飲、多尿があること、さらにひどくなると筋肉低下がおこる可能性もあると伝えたため、患者は服用しなかった。
当該患者は10ヵ月で40kgの減量に成功しており、それを維持したいと思っていた。そのため、下痢が続いていることも気にしてはいたが、それよりも痩せること、サプリメントを摂取することの方が患者にとっては重要であったため、薬剤師が説明したような副作用がでるのであれば、コロネル細粒を服用しない方が良いと判断したようであった。
患者に「カルシウム剤をどのくらい服用しているのか?」を確認した上で、どの程度なら摂取可能であるかなど、現実に沿った服薬指導をするように心がける必要がある。コロネル細粒 3gを服用すると約600mgのカルシウムを摂取することになるが、カルシウム摂取量の上限量は1日量2300mgであり、コロネル細流と合わせてその範囲内であれば、高カルシウム血症を回避しながらのカルシウム剤を摂取することも可能であると考えられる。
患者の背景も考えながら、言葉を選んで服薬指導するべきであった。
コロネル細粒・錠は、カルシウム剤(L-アスパラギン酸カルシウム、乳酸カルシウム等)との併用で高カルシウム血症が現れるおそれがある。コロネル細粒の添付文書には以下の記載がある。
1.本剤はカルシウムを含有(ポリカルボフィルカルシウム 1.0g中にカルシウムとして約200mg含有)するため、これらの薬剤と併用するとカルシウムの過剰摂取となる。
2.本剤はカルシウムが脱離して薬効を発揮するが、カルシウムとの共存下では再結合により薬効が減弱する。
(コロネル®の医薬品添付文書、2014年4月改訂(第12版)、アステラス製薬より)
澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。
薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。
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