Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例59

処方は30mLで包装は10mL…患者が混乱する1日量と1回量の表記

ヒヤリした!ハットした!

患者から「処方箋には30mLと書いてあったのに、もらった薬の量が少ない」と電話があった。

<処方>60歳代の男性。病院の内科。オーダー/印字入力。

マグテクト配合内服液分包 30mL 分3 毎食前 14日分

<効能効果>

●マグテクト配合内服液<水酸化アルミニウムゲル・水酸化マグネシウム>
下記疾患における制酸作用と症状の改善
胃・十二指腸潰瘍、胃炎、上部消化管機能異常

どうした?どうなった?

患者の家族が、薬局に薬を受け取りに来た。<処方>の通り、マグテクト配合内服液分包の10mL/包を1日3包で14日分を調剤し、家族に投薬した。
ところが、患者本人から薬局に電話があり、「処方箋には30mLと書いてあったのに、もらった薬は1包に10mLしか入っていない(包装に10mLと記載されている)。薬局の間違いだと思うので取りかえて欲しい」と言われた。患者は処方箋のコピーを持っているようであった。
そこで、処方箋に記載してある30mLとは1日量であり、それを3回に分けて、各食事の前に服用するように指示してあることを丁寧に説明すると、最終的に患者は納得した。

なぜ?

処方箋の内容を読み、さらに間違って解釈する患者がいるとは思っていなかった。患者本人が来局しなかったため、家族に投薬・説明したことも誤解を招いた要因の1つだと考えられる。

ホットした!

投薬する際には、処方箋通りに調剤されていることを患者に納得してもらうためにも、処方箋を提示しながら調剤した薬剤の確認と説明を行うようにする。
患者が処方箋を見て(あるいは覚えていて)服薬を行った場合、30mLを1回量と判断して過量服用する可能性もある。このようなことを防止するためにも、「処方箋の書き方」を「1日量」から「1回量」の記載へ変更することを可及的速やかに行う必要があると考えられる(「内服薬処方せんの記載方法の在り方に関する検討会報告書」、平成22年1月、厚生労働省)。

もう一言

類似事例を以下に示す。

事例1:ウテメリン錠の1日量を1回量と誤解して動悸発現
30歳代の女性。妊婦であり、「ウテメリン錠5mg 3錠 1日3回 毎食後 14日分」が処方された。
患者は、ウテメリン(一般名:リトドリン塩酸塩)を1回1錠のところ、勘違いして1回3錠、つまり1日9錠を2日間服用していた。薬剤を交付した2日後の朝に、患者から「一昨日、2週間分の薬をもらったはずですが、あと24錠、8回分しかありません」と電話があり、不審に思った薬剤師が服用方法を確認。すると、患者が「医師から1日3錠を3回飲むように説明を受けたので、1回3錠を1日3回飲んでいた」と述べたことから、誤服薬が発覚した。
医師は「3錠を3回で飲むように」と言ったのであろうが、患者には「3回で」の「で」がはっきりと聞こえなかったと思われる。患者には、手に力が入らない、動悸など、リトドリンの過量投与によると考えられる症状が現れていた。薬剤師から医師に状況を連絡し、患者に再度受診してもらったところ、特に問題はないことがわかった。薬剤師は、服用方法を積極的にきちんと説明しなかったことを患者に詫び、正しい服用方法を改めて指導した。

事例2:セフゾンカプセルの1回量を3カプセルと勘違いして誤服薬
70歳代の女性。直腸脱手術の術後に、「セフゾンカプセル100mg 3Cap 1日3回 毎食後 3日分」が処方された。
患者は、セフゾンカプセル(一般名:セフジニル)の薬袋の「本日朝食後より1日3回 毎食後 3日分」という記載を見て、「3」の数字が並んでいるために混乱。1回量を3カプセルと勘違いし、服用してしまった。
患者は高齢であるが、かなりしっかりしており、薬剤師は患者が服薬を自己管理できていると思い込み、特に口頭で服用方法を説明しなかったのが原因である。

※事例1,2は「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」2005年 日経BP社 参照

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2018年1月4日

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