Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例58

処方は200mgで薬袋は100mg…患者の不安を招いた入力ミス

ヒヤリした!ハットした!

患者は、前回の薬が正しく調剤されていたか不安になった。

<処方>30歳代の女性。病院の心身医療科。処方オーダリング。

前々回の処方

ハイペン錠100mg 2錠 1日2回 朝夕食後 14日分


前回および今回の処方

ハイペン錠200mg 2錠 1日2回 朝夕食後 14日分

*この薬局では、調剤終了後、全ての調剤薬をデジタルカメラで記録し、保存している。

<効能効果>

●ハイペン錠 200mg <エトドラク>
 下記疾患並びに症状の消炎・鎮痛
 関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、肩関節周囲炎、頸腕症候群、腱鞘炎
 手術後並びに外傷後の消炎・鎮痛

どうした?どうなった?

前々回は「ハイペン錠100mg 2錠 1日2回」の処方で、前回からハイペン錠200mgに変更になっていた。しかし、前回はレセコン入力時に間違って100mgと入力し、薬袋上の医薬品名の記載だけがハイペン錠100mgとなってしまっていた。
患者は錠200mgの薬を交付された後も、その薬袋の記載が100mgになっていることには気づかなかったし、また、PTPシートの外観が200mgでも気にしていなかった。しかし、今回の受診で(前回の薬を飲み終えたあと)、薬袋を見たところハイペン錠100mgと記載されていたので、これまで自分が服用していたのは本来服用するはずの200mgではなく、変更前の100mg錠だったのではないかと不安になり、薬局でそのことを訴えた。
そこで、前回調剤時のデジタルカメラの記録を確認したところ、正しく200mg錠が調剤されていたので、薬袋の誤記載を謝罪し、患者にその経緯を説明した。患者は処方通りの薬を服用していたことが明確になったため、納得したようであった。

なぜ?

レセコンの入力ミス、鑑査ミス、投薬時の確認ミスである。

ホットした!

デジタルカメラの有用性が示された事例であるが、“デジカメがあって良かった”と安心して終わるだけでなく、レセコンの入力間違いが患者の服薬に対して様々な影響を与えることをもっと重大なことだと認識しなくてはいけないと、薬局内で再認識した。

もう一言

この薬局におけるデジタルカメラを使った調剤記録の方法を紹介する。この薬局では、1人の患者の調剤が終了後、調剤した全ての薬剤をデジタルカメラで撮撮して保管しており、後日に調剤薬の確認が必要となった場合に使用している。

図.調剤薬をデジカメで撮っているところ。 画像

図.調剤薬をデジカメで撮っているところ。

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2017年12月4日

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