Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例57

ボナロン錠を「朝の起床時」ではなく「夜間のトイレ時」に服用

ヒヤリした!ハットした!

ボナロン錠の服薬コンプライアンスを確認したところ、朝起床時ではなく、夜間トイレに起きたときに服用していた。

<処方>80歳の女性。病院の整形外科。処方オーダリング。

ボナロン錠 35mg 1錠 1日1回 起床時
週1回 月曜日 4日分
ワンアルファ錠 1μg 1錠 1日1回 朝食後 28日分
アスパラ-CA錠 200g 1錠 1日1回 朝食後 28日分

<効能効果>

●ボナロン錠 35mg<アレンドロン酸ナトリウム水和物>
 骨粗鬆症

どうした?どうなった?

当該患者は、2ヵ月前よりボナロン錠 35mgの服用を開始していた。薬剤師が服用状況を確認したところ、夜間何度かトイレに起きるが、そのときにきちんとコップ1杯の水で服用している、と答えた。
ボナロン錠が初めて処方されたときには、患者本人に指導箋を用いて口頭にて詳しく説明をして、薬袋には「朝起床時、週1回、月曜日」と大きく記載していた。
患者に、「起床時」とは「朝起きたとき」の意味であり、ボナロン錠を服用後30分は身体を横にしないでほしいことを、理由や背景を含めて改めて説明し、正しい服用方法である朝起床時に服用することを理解してもらった。幸いにも、患者には胃腸障害などの有害事象は発生していなかった。

なぜ?

患者は、薬剤師からボナロン服用時の注意点として、「1.起床後すぐに」「2.コップ1杯の水で」「3.30分は水以外のものは飲食せず」「4.30分は横にならない」の4つの説明を受けた。このとき、患者は、夜間何度かトイレに起きるが、そのときに服用すれば、これら4つの注意事項のうち1から3の3つを確実に満たせると自己判断し(「100点満点で75点、合格点!」)、夜間トイレに起きたときに服用しようと決めたようであった。
服薬指導した薬剤師は、「起床時」という言葉を「朝起きたとき」以外の意味で解釈する患者が存在するとは想定していなかった。4つの注意事項を羅列しただけの服薬指導をしていたかもしれない。1つひとつ、患者が対応できるか確認をしながら服薬指導すべきであった。

ホットした!

患者が誤解するような表現は使わないように気を付ける。今回の事例では、「起床時」→「朝起きたとき」または「朝の起床時」と説明する。
特別な服用方法である場合には、その理由や背景も患者に説明して、より深く理解してもらう。
投薬時に、服薬に関する注意点を患者が遵守できるかどうかの確認も怠らないようにする。

もう一言

<患者への用法用量の説明>

  • ・通常、成人は1回1錠(アレンドロン酸として35mg)を1週間に1回、朝起きたときに(食事の前に)コップ1杯の水(約180mL)と一緒に服用します。必ず指示された服用方法に従ってください。
  • ・服用する曜日を決め、毎週同じ曜日の朝に服用してください。
  • ・水以外の飲み物(カルシウム、マグネシウムなどの含量の特に高いミネラルウォーター、お茶、コーヒー、ジュース、牛乳など)で飲まないでください。薬をかんだり口の中で溶かしたりしないでください。
  • ・薬を飲んでから30分間は水以外の飲み物や食べ物、他の薬をとらないでください。また、飲んでから30分間は横にならず、その日最初の食事を終えるまでは身体を起こしたままでいてください。就寝時または起床前には飲まないでください。
  • ・飲み忘れた場合は、気付いた日の翌朝に1錠を飲んでください(飲み方はいつもと一緒です)。次からは、決められた曜日の朝に飲んでください。ただし決して2回分を一度に飲んではいけません。
  • ・誤って2日連続で飲んでしまったり、同時に2錠飲んでしまったりした場合は、次回の服薬予定日は休薬し、次々回の服薬予定日から予定通り服用してください。異常を感じた場合には、すぐに医師または薬剤師に相談してください。
  • ・医師の指示なしに、自分の判断で飲むのを止めないでください。

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2017年12月4日

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