Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例55

規格の確認が疎かになりがち!インスリン注射針の誤調剤

ヒヤリした!ハットした!

BDマイクロファインプラス31G×8mmを調剤すべきところ、入院前まで処方されていたBDマイクロファインプラス31G×5mmを間違って交付しそうになった。

<処方>70歳代の男性。A病院の内科。処方オーダリング。

キネダック錠50mg 3錠 毎食前 28日分
ノボラピッド70ミックス注 フレックスペン 6キット
BDマイクロファインプラス31G×8mm 84本
他に 3剤

<効能効果>

本品は、専用医薬品カートリッジとともに取り付け、皮下または筋肉内へ医薬品またはワクチンを注入するものである。

どうした?どうなった?

患者は、以前からA病院を受診しており、BDマイクロファインプラス31G×5mmが処方されていた。その後、骨折のためA病院に2ヵ月ほど入院しており、退院後は今回が初めての来局であったが、このときの処方は外来では初めて31G×8mmとなっていた。
投薬時に患者から針の長さが違うことを指摘され、幸いその場で発見することができた(8mmの在庫はなかったため、卸に連絡し急配してもらった)。患者に聞くと、入院中に試した8mmが使いやすくて気に入ったため、そのまま使いたいと医師に希望したとのことだった。

なぜ?

BDマイクロファインプラスは医療材料であったため、医薬品と違って確認が甘くなってしまった。対応した薬剤師は31G×5mmしか取り扱ったことがなかったため、尚更、長さ(8mm)の確認を怠ってしまった(31G×8mmの存在を認識していなかった)。

ホットした!

注射針などの医療材料であっても、医薬品と同等に細かな規格のチェックを怠らない。

もう一言

以下に、注射針(マイクロファインプラス)を誤調剤した類似事例を示す。本事例と同様に、医薬品の調剤に意識が集中して、注射針のチェックに油断が見られる事例が多い。

【事例1】
30歳代の女性。マイクロファインプラス32Gのところ、31Gで誤調剤してしまった。鑑査時に気付いて交換した。この薬局では、ほとんどの処方がマイクロファインプラス31Gだったため、思い込みで調剤してしまった。
【事例2】
50歳代の女性。マイクロファインプラス31Gを105本のところ、103本を誤調剤した。鑑査で気付き訂正した。70本入り1箱+14本入り2袋+端数7本で105本になるが、105本が頭にあり端数を5本にしてしまった。
【事例3】
70歳代の女性。マイクロファインプラス31G×8mmの集薬が漏れてしまった。投薬前の最終チェックで気づいた。医薬品に関する処方内容が複雑であり、注射針について見逃してしまった。
【事例4】
年齢、性別不明。定期でマイクロファインプラスを処方されている患者である。薬歴コメントの「マイクロファインは箱から出してお渡し」を見逃し、箱のまま調剤・監査した。投薬時に本人より指摘され、その場でお詫びして箱から出し、お渡し。注意力不足であった。
【事例5】
70歳代の男性。処方はペンニードルのところ、マイクロファインプラスで誤調剤。投薬時に患者に指摘され交換した。注射針の確認が疎かになってしまった。
澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2017年11月1日

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