Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例51

週1回のボナロン錠35mgを4日間連続服用した患者

ヒヤリした!ハットした!

ボナロン錠35mg<アレンドロン酸ナトリウム水和物>が初めて処方された患者が、1週に1回のところ4日間連続して服用してしまった。

<処方1>70歳代前半の女性。A病院の整形外科。処方オーダ/印字出力。

ボナロン錠 35mg 1錠 週に1回 起床時 4日分
ワンアルファ錠 1.0μg 1錠 1日1回 朝食後 28日分

*ボナロン錠35mgは、2錠入りシートが2枚交付された。

<効能効果>

●ボナロン錠35mg(アレンドロン酸ナトリウム水和物)
骨粗鬆症
(本剤の適用にあたっては、日本骨代謝学会の診断基準等を参考に、骨粗鬆症との診断が確定している患者を対象とすること。)

どうした?どうなった?

患者は、骨粗鬆症のため新たに<処方1>が処方された。投薬を担当した薬剤師は、ボナロン錠35mgについて、服用方法や注意点を説明し、その際に〝週に1回、曜日を決めて服用する〟ことも伝えた。患者は納得した様子であった。
しかし、患者が28日後に再来局した時、ボナロン錠35mgの服用状況を確認したところ、患者は「うっかりと4日間連続して服用してしまった。」と述べた。幸いなことに、特に胃腸不良など健康被害はないことを確認した。本日の診察で医師にも伝えたところ、今後は服薬間違いしないように注意されたが、特に何も対応はとられなかったとのことである。

なぜ?

患者は、薬局で説明を受けた時には、週に1回服用すると理解していたが、ボナロン錠の服用時の注意点(「朝起床時に水約180mLで服用、その後少なくとも30分は横にならず、飲食(水を除く)並びに他の薬剤の経口摂取も避けること」など)が沢山あったことに気を取られて、失念してしまった。薬が4日間でなくなった時点(5日目には薬がない)で、週に1回服用する薬であったことを思い出したが、既に服用してしまったものの体調不良もないので、病院や薬局には連絡しなかった。
投薬した薬剤師は、患者用指導せんも交付していたが、指導せんを用いた詳しい説明はしていなかった。また、その場で服用曜日を決めて薬剤シート(表面に服用曜日と月日の記入欄がある)に記入するなど、具体的な説明ができていなかった。
また、理由は不明であるが、患者は薬剤シートの表面(週1回1錠と記載されている)ではなく、裏面(飲み忘れた場合の対処方法や副作用などのトラブル例について記載されているが週1回1錠服用の記載はない)の注意書きを見てから薬をとりだしていた。

ホットした!

特に高齢の患者は、薬局で説明を受けて理解したつもりでも、帰宅後にはすっかり忘れてしまうことがある。服用方法が特殊な薬は、いつ誰が見てもわかりやすいように工夫するべきである。今回の場合、その場で服用する曜日を決めて薬剤シートに曜日と月日を手書きで記入することを徹底する。

もう一言

骨粗鬆症の治療薬であるビスホスホネート系薬の経口剤には、1日1回、週1回、4週に1回、月1回に服用する製剤がある。例えば、ボナロンには1日1回服用する5mg錠と週1回服用する35mg錠がある。
今回は患者による服用間違いであったが、以下に示すように医者による処方ミスも報告されている。
事例:80歳代の女性。ボナロン錠35mgが30日分処方された。他の薬が30日分の処方だったため、医師に疑義照会して4日分(週1回の服用なので4週間分)へ変更となった。

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2017年8月30日

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