アンテベート軟膏とウレパールクリームの不適正な混合処方
油性の軟膏剤であるアンテベート軟膏0.05%と、乳剤性の軟膏剤であるウレパールクリーム10%の不適正な混合指示が処方箋に記載されていた。
<処方1>50歳代の女性。病院の産婦人科。
アンテベート軟膏 0.05% | 20g |
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ウレパールクリーム 10% | 20g 混合 足 1日4~5回 塗布 |
<効能効果>
●アンテベート軟膏 0.05%・クリーム 0.05%・ローション 0.05%(ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル)
湿疹・皮膚炎群(手湿疹、進行性指掌角皮症、脂漏性皮膚炎を含む)、乾癬、虫さされ、薬疹・中毒疹、痒疹群(ストロフルス、じん麻疹様苔癬、結節性痒疹を含む)、紅皮症、紅斑症(多形滲出性紅斑、ダリエ遠心性環状紅斑)、ジベル薔薇色粃糠疹、掌蹠膿疱症、扁平紅色苔癬、慢性円板状エリテマトーデス、肉芽腫症(サルコイドーシス、環状肉芽腫)、特発性色素性紫斑(マヨッキー紫斑、シャンバーク病)、円形脱毛症、肥厚性瘢痕・ケロイド、悪性リンパ腫(菌状息肉 症を含む)、アミロイド苔癬、水疱症(天疱瘡群、ジューリング疱疹状皮膚炎・水疱性類天疱瘡)
●ウレパールクリーム 10%・ローション 10%(尿素)
アトピー皮膚、進行性指掌角皮症(主婦湿疹の乾燥型)、老人性乾皮症、掌蹠角化症、足蹠部皸裂性皮膚炎、毛孔性苔癬、魚鱗癬、頭部粃糠疹(ローションのみ)
アンテベート軟膏とウレパールクリームは、それぞれ油性と乳剤性で基剤が異なるため、混合すると室温(15~30℃)で2週間、4週間、8週間保存したすべての時点において、若干きめの粗い外観になり、柔らかくなるため、配合不適であるとのデータがある。
そこで、医師に疑義照会を行い、代替薬を提案した結果、以下の通り処方変更になった。
<処方2> (疑義照会後の処方)
アンテベートクリーム 0.05% | 20g |
---|---|
ウレパールクリーム 10% | 20g 混合 足 1日4~5回 塗布 |
産婦人科の医師は、専門外であるため両薬剤が配合不適であることを知らなかった。
薬剤師は、本事例のように軟膏剤やクリーム剤の混合にあたっては、配合可否を注意深く確認する。基剤の特徴を把握し、基本的な配合の可否に関して理解しておく必要があるだろう。
医師には、処方される可能性がある軟膏剤やクリーム剤の配合変化表を提供する。
アンテベート軟膏は油脂性基剤、ウレパールクリームはO/W型(水中油型)の乳剤性基剤である。O/W型基剤は、油脂性基剤との混合により乳化が破壊されやすく、空気が混入しやすいので、混合すべきでないと考えられる。
両剤を混合した場合、含量低下、臭いが起こり、室温、冷所保存において2週、4週、8週とも混合不可である。
(「軟膏・クリーム配合変化ハンドブック 第2版」じほう社、2015年)
澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。
薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。
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