ヒルドイドローションとビーソフテンローションの同時処方?
同じヘパリン類似物質であるヒルドイドローション(先発品)とビーソフテンローション(後発品)が同時に処方された。薬剤師は、どちらかが間違いだと思ったが、実際は、適正な処方であった。
<処方1>30歳の女性。皮膚科クリニック。印字出力/処方オーダ。
ヒルドイドローション 0.3% | 50g 顔に塗布 |
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ビーソフテンローション 0.3% | 50g 体に塗布 |
<効能効果>
●ヒルドイドローション 0.3%(先発品:ヘパリン類似物質)
●ビーソフテンローション 0.3%(後発品:ヘパリン類似物質)
皮脂欠乏症、進行性指掌角皮症、凍瘡、肥厚性瘢痕・ケロイドの治療と予防、血行障害に基づく疼痛と炎症性疾患(注射後の硬結並びに疼痛)、血栓性静脈炎(痔核を含む)、外傷(打撲、捻挫、挫傷)後の腫脹・血腫・腱鞘炎・筋肉痛・関節炎、筋性斜頸(乳児期)
患者が持参した処方箋には使用部位が記載してあったが、成分<ヘパリン類似物質>も剤形も全く同じ製品が重複して処方されていたため、薬剤師はどちらかが間違いだろうと思い疑義照会しようとした。
しかし、疑義照会する前に患者に詳細をインタビューしたところ、ヒルドイドローションは乳状のローションなので顔に、ビーソフテンローションはサラサラしたローションなので体に塗布するように、使い分けをすることが判明した。結局、疑義照会しないでそのまま調剤して患者に交付した。
薬剤師は、ヒルドイドローションとビーソフテンローションの性状特性、使用感などを詳しく把握していなかった。
ヒルドイドローション 0.3% は、ヘパリン類似物質の先発品であり、ビーソフテンローション 0.3% はその後発品である。
後発品の外用剤の場合、先発品と比べて性状特性や使用感が異なる可能性を認識しておく必要がある。
ヒルドイドローションとビーソフテンローションの特性
ヒルドイドローションとビーソフテンローションはともにヘパリン類似物質を有効成分とするローション剤であるが、添加物の一部が異なる。共通の添加物は、「グリセリン、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、カルボキシビニルポリマー」であり、それぞれの独自の添加物は以下である。
- ・ヒルドイドローション
白色ワセリン、スクワラン、セタノール、還元ラノリン、セトマクロゴール 1000、モノステアリン酸グリセリン、ジイソプロパノールアミン。
展延性に優れ、広範な患部に使用しやすい水中油型の乳剤性ローション剤(インタビューフォームより) - ・ビーソフテンローション
ヒプロメロース、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、トリエタノールアミン。
さらっとした使用感のローション剤(インタビューフォームより)
澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。
薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。
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