デパケンR錠のサイズが大きすぎて服用できないと不安
てんかんの患児に今回初めて“デパケンR錠200mg”が処方された。投薬時、実物を目の前にした患児と母親は、服用できるかどうか大変に不安になってしまった。
<処方1>8歳の女児。病院の神経内科。処方オーダリング。
デパケン R錠 200mg | 1錠 1日1回 朝食後 30日分 |
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*通常1日量400~1,200mgを1日1~2回に分けて経口投与することになっているため、本処方は適応外使用である。
<効能効果>
デパケン錠 100 mg・200 mg、R 錠 100 mg・200 mg、細粒 20%・40%、シロップ 5%(バルプロ酸ナトリウム)
1.各種てんかん(小発作・焦点発作・精神運動発作ならびに混合発作)およびてんかんに伴う性格行動障害(不機嫌・易怒性等)の治療
2.躁病および躁うつ病の躁状態の治療
3.片頭痛発作の発症抑制
母親の話によると、処方元の病院では“デパケン細粒 40%”も採用されていたが、患児が粉薬を嫌がったため、本処方になったとのことだった。
母親は、デパケン R 錠 200 mg の錠剤サイズが大きく(直径 10.6 mm、厚さ 6.6 mm)、飲みづらいかもしれないということを医師からあらかじめ聞いていた。そして実物を見て、確かに大きすぎて飲めないと考えた。
この訴えを聞き、薬剤師は、シロップ剤(デパケンシロップ 5%)もあることを提案した。シロップ剤の方が良いとの意見を受け、医師に疑義照会し、以下の通り処方変更となった。
<処方2> デパケンシロップ 5% 4mL | 1日1回 朝食後 30日分 |
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*通常 1 日量 8〜24 mL を 1 日 2〜3 回に分けて経口投与することになっているため、本処方は適応外使用である。
医師は、小児の飲みやすさに配慮して、デパケン細粒と錠剤を選択できるよう提案してはいたが、実物を見せてまで確認はしていなかった。更に、医師は、デパケンシロップ 5% の剤形があることを認識していなかった可能性がある。
小児への投薬時には、必ず服薬できるかどうか患者と家族に確認する。患者の要望を聞き、できる限り服薬が容易になるよう対応する。ジェネリック医薬品で、最適な剤形があるかどうも確認の対象とする。
粉砕、脱カプセルが必要なケースでは、その可否について必ず確認してから対応する。
「デパケン R 錠 100 mg・200mg」と「デパケンシロップ 5%」を各種てんかんおよびてんかんに伴う性格行動障害の治療に用いる場合の用法・用量は以下である。
「デパケン R 錠 100 mg・200 mg」の用法・用量
通常1日量バルプロ酸ナトリウムとして400~1,200mgを1日1~2回に分けて経口投与する。ただし、年齢・症状に応じ適宜増減する。
「デパケンシロップ 5%」の用法用量
通常1日量8〜24mL(バルプロ酸ナトリウムとして400〜1,200mg)を1日2〜3回に分けて経口投与する。ただし、年齢・症状に応じ適宜増減する。
澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。
薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。
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