Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例34

現場復帰したが!タリオンOD錠を知らなかった薬剤師

ヒヤリした!ハットした!

口腔内崩壊錠のタリオンOD錠10mgを調剤しなければならないところ、普通錠のタリオン錠10mgを集薬してしまった。

<処方1>30歳代の女性。病院の内科。オーダー/印字出力。

タリオン OD錠10mg 2錠 1日2回朝夕食後 14日分

<効能効果>

タリオン錠 5 mg・10 mg、OD 錠 5 mg・10 mg(ベポタスチンベシル酸塩)

[成人]

アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、皮膚疾患に伴う瘙痒(湿疹・皮膚炎、痒疹、皮膚瘙痒症)

[小児]

アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、皮膚疾患(湿疹・皮膚炎、皮膚瘙痒症)に伴う瘙痒

どうした?どうなった?

この薬局では、タリオン錠は棚に入っており、その口腔内崩壊錠であるタリオンOD錠は引き出しの中に入っていた。調剤した薬剤師は、処方のOD錠という記載を見逃し、棚に入っていた普通錠であるタリオン錠を調剤した。

鑑査時に間違いが発見されたため、有害事象は起こっていない。

なぜ?

調剤した薬剤師は、2005 年頃まで調剤薬局に勤務していた。その後、家庭の都合で一時退職していたが、最近になって職場に復帰したところであった。

この薬剤師が以前に薬局に勤務していた頃には、口腔内崩壊錠であるタリオン OD 錠はまだ発売されておらず(2007 年発売)、タリオン OD 錠の存在を全く知らなかった。したがって、処方のタリオンという印字を見て、何の疑問も持たずに普通錠を調剤してしまった。

ホットした!

本事例の調剤担当者のように職場復帰した薬剤師の場合、口腔内崩壊錠の存在すら知らないこともあり得る。剤形だけでなく、規格も以前と異なる場合があるので注意が必要である。

もう一言

タリオン錠(普通錠)は2000年7月にアレルギー性鼻炎を効能・効果として承認され、10月に発売された。その後、2002年1月に蕁麻疹、皮膚疾患に伴う掻痒(湿疹・皮膚炎、痒疹、皮膚掻痒症)の効能・効果が承認された。また、2007年3月に、タリオンOD錠が承認された。さらに、2015 年 5 月には、小児(7 歳以上)における効能・効果及び用法・用量が承認された。

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2016年11月28日

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