Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例27

ランソプラゾールOD錠の斑点の色調が先発品と後発品で違っていて不安になった患者

ヒヤリした!ハットした!

患者は自宅でランソプラゾールOD錠15mg「ケミファ」<ランソプラゾール>服用時に改めてよく見ると、茶色い粒が錠剤に不均一に散らばっており、カビが生えているか変質しているのではないかと不安になり服用しなかった。

<処方1>50歳代の男性。病院の神経内科。オーダー/印字出力。

ユベラNソフトカプセル 200mg
メチコバール錠 500μg
3Cap
3錠 1日 3回 毎食後 28日分
ブロプレス錠 8mg 1錠 1日 1回 朝食後 28日分
タケプロンOD錠 15mg 1錠 1日 1回 寝る前 28日分

*患者の希望によりタケプロンOD錠 15mgはランソプラゾールOD錠15mg「ケミファ」に変更。

<効能効果>タケプロンOD錠 15mg、ランソプラゾールOD錠15mg「ケミファ」(ランソプラゾール)

[OD錠15]

○胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、逆流性食道炎、Zollinger-Ellison症候群、非びらん性胃食道逆流症、低用量アスピリン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制、非ステロイド性抗炎症薬投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制

○下記におけるヘリコバクター・ピロリの除菌の補助

胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、早期胃癌に対する内視鏡的治療後胃、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎

[OD錠30]

○胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、逆流性食道炎、Zollinger-Ellison症候群

○下記におけるヘリコバクター・ピロリの除菌の補助

胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、早期胃癌に対する内視鏡的治療後胃、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎

どうした?どうなった?

翌朝、患者から、薬局にクレームの電話があった。患者は、希望によりタケプロンOD錠 15mgからランソプラゾールOD錠15mg「ケミファ」へ変更となっていた。変更となったランソプラゾールOD錠15mg「ケミファ」の品質に問題があると考え、昨晩は服用しなかったことが判明した。

タケプロンOD錠 15mgとランソプラゾールOD錠15mg「ケミファ」の外観を比較すると、前者は白い錠剤の表面に赤色の粒が不均一に入っているが、後者は赤色でなく、茶色の斑点であった。

患者には、ランソプラゾールOD錠15mg「ケミファ」の粒の色がタケプロンOD錠 15mgとは異なるが、品質に問題ないことを説明するとともに、投薬時に説明不足だったことをお詫びした。そこで患者は納得して電話を切った。

なぜ?

両剤の斑点の色の違いから、ランソプラゾールOD錠15mg「ケミファ」の斑点をカビや変質と考えてしまった可能性がある。なお、後発医薬品はいずれも先発品よりも茶色味の強い斑点である。

薬局ではタケプロンOD錠には毎回説明用紙を添付しており、そこには「外観について:お薬に赤い粒が不均一に入っているように見えますが、効き目に問題はありません。」と説明書きがあったが、ランソプラゾールOD錠「ケミファ」には説明用紙がついていなかった。

投薬時の説明で、先発品と後発品を並べてみるなど、外観の違いについての説明が十分ではなかった。

ホットした!

後発医薬品の切り替え時には、先発医薬品との違いを丁寧に説明する。とりわけ外観の相違は今回のような事例を招く可能性があることを認識し、切り替え前後の医薬品の実物を投薬カウンターにおいて提示する等、注意深く対応する。

事前に先発医薬品と後発医薬品の比較表、服薬指導のポイントを整理しておき、施設内で共有しておく。

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2016年8月29日

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