週1回服用のメトトレキサートを連日服用していた患者
週1回、木曜日のみ服用するメソトレキセート錠を、同じ週の木曜日と金曜日の2日間で連日服用してしまっていた。
<処方1>63歳の女性。病院の腫瘍血液感染症内科。オーダー/印字出力。
オメプラール錠 | 10mg 1錠 1日1回 夕食後 14日分 |
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マグミット錠 | 500mg 2錠 1日1回 就寝前 14日分 |
ブイフェンド錠 | 50mg 6錠 1日2回 朝・夕食後 14日分 |
サイレース錠 | 1mg 1錠 1日1回 就寝前 14日分 |
メソトレキセート錠 | 2.5mg 5錠 1日1回 就寝前 2日分(木曜日の夜) |
プレドニン錠 | 5mg 16錠 1日1回 朝食後 4日分(4/4 金曜日~) |
*実際の処方せん通りに記載した。
*当該診療科からは白血病の薬物治療において、メトトレキサートとプレドニゾロンが同様の用法・用量で併用処方される。なお、このような用法・用量での両剤併用のプロトコール(レジメン)の詳細は不明である。
<効能効果>メソトレキセート錠 2.5mg(メトトレキサート)
下記疾患の自覚的並びに他覚的症状の緩解
- 急性白血病
- 慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病
- 絨毛性疾患(絨毛癌、破壊胞状奇胎、胞状奇胎)
患者は白血病の治療を行っており、前回は2ヶ月前に同じ処方が出ていた。投薬時にメソトレキセート錠の飲み方を説明していたところ、患者が「前回は木曜日、金曜日の2日間で飲んでしまったけど・・・。」と述べた。
念のため医師に確認をとったところ、「メトトレキサートは週1回で。」との回答であった。医師に患者が前回間違って服用していたことを伝えると、「飲んでしまったものは仕方がないので、今回よりきちんと飲むように指導してください。」とのことであった。
患者に医師の回答を伝え、再度正しい服用法の詳しい説明を行った。
全体的に複雑な飲み方の処方であるため、患者が混乱した可能性がある。メソトレキセート錠は指定日服用、プレドニン錠<プレドニゾロン>は開始日指定の4日間連日服用であるために、混乱を招いたと思われる。
当該患者は、メソトレキセート錠を服用するのは前回が初めてではなく、過去5~6回にのぼっているため、患者が服用法を熟知しているものと思い込んで、前回に投薬した薬剤師が詳しい説明を省いてしまったと考えられる。
今回のように、治療のため抗癌薬のように何クールか服用する薬剤で、患者がすでに服用したことがある場合でも、患者がわかっていると思い込まずに、再度服用方法を確認する。
週1回の服用、開始日指定の服用など飲み方が複雑な処方では、一包化調剤(本事例での服薬時点は、朝・夕・就寝前)を行って、更に、実際の服用日を薬袋に明記するなどして念入りに説明を行うとともに、次回投薬時にコンプライアンスを確認する必要がある。
澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。
薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。
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