「1回服用量は2錠!」と強調したところ、処方全体で2錠/回しか服用していなかった
12月15日に来局した際、患者から「前回、12月4日処方の薬の中で、ムコダイン錠が多く入っていたよ。」と言われる。
<処方1>80歳代の男性。病院の内科科。印字
(12月4日)(12月15日)
ムコダイン錠 250mg | 6錠 1日 3回 毎食後 3日分 |
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フロモックス錠 100mg | 3錠 1日 3回 毎食後 3日分 |
コデインリン酸塩散 1%「第一三共」 | 6g 1日 3回 毎食後 3日分 |
*高血圧症である。
<ムコダイン錠 250mg(カルボシステイン)の効能効果>
- 下記疾患の去痰
上気道炎(咽頭炎、喉頭炎)、急性気管支炎、気管支喘息、慢性気管支炎、気管支拡張症、肺結核 - 慢性副鼻腔炎の排膿
<フロモックス錠 100mg(セフカペン ピボキシル塩酸塩水和物)の効能効果>
- 表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、リンパ管・リンパ節炎、慢性膿皮症
- 外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、乳腺炎、肛門周囲膿瘍
- 咽頭・喉頭炎、扁桃炎(扁桃周囲炎、扁桃周囲膿瘍を含む)、急性気管支炎、肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染
- 膀胱炎、腎盂腎炎
- 尿道炎、子宮頸管炎
- 胆嚢炎、胆管炎
- バルトリン腺炎、子宮内感染、子宮付属器炎
- 涙嚢炎、麦粒腫、瞼板腺炎
- 外耳炎、中耳炎、副鼻腔炎
- 歯周組織炎、歯冠周囲炎、顎炎
<リン酸コデイン散 1%(:コデインリン酸塩水和物)の効能効果>
- 各種呼吸器疾患における鎮咳・鎮静、疼痛時における鎮痛
激しい下痢症状の改善
「ムコダイン錠は1回2錠服用してください。」と服薬指導していたところ、患者はなぜか1回1錠で服用していた。結果的にムコダイン錠の過少量服用となっていたため、残薬として余ってしまった。従って、12月15日に来局した際、患者から「前回、12月4日処方の薬の中で、ムコダイン錠が多く入っていたよ。」と言われた。幸い、ムコダイン錠の過少量服用によって患者の症状の悪化は見られることはなかった。患者には、残っているムコダイン錠は服用しないように指導した。
12月 4日の投薬時、ムコダイン錠の 1回服用量を「2錠」と強調して説明したところ、1回 2錠という言葉が頭に残っていたため、ムコダイン錠 1錠とフロモックス錠 1錠を合わせて 2錠と勘違いして服用していたと考えられる。
12月15日も12月4日と同じ処方だったので、薬袋に「1回量は錠剤3錠と粉薬2包(1g/包)!」と大きく記載した。服用時期毎に1回服用量を丁寧に説明することも考えられる。「朝は全部で3錠、2包(1g/包)、昼は全部で3錠、2包(1g/包)、夕は全部で3錠、2包(1g/包)」など。
澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。
薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。
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