Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例13

ゼチーア錠10mgとセレスタミン配合錠のPTPシートの背面が類似

ヒヤリした!ハットした!

鑑査時に、ゼチーア錠<エゼチミブ>が重複調剤されていると勘違いし、慌ててしまった。

<処方1>50歳の女性。病院の消化器内科。オーダー/印字出力。

ゼチーア錠 10mg 1錠 1日1回 朝食後 14日分
タリオン錠 10mg 1錠 1日1回 朝食後 14日分
セレスタミン配合錠 1錠 1日1回 朝食後 14日分
ハルシオン 0.25mg錠 1錠 1日1回 就寝前 14日分

<効能効果>

  • セレスタミン配合錠(ベタメタゾン・d-クロルフェニラミンマレイン酸塩)
    蕁麻疹(慢性例を除く)、湿疹・皮膚炎群の急性期及び急性増悪期、薬疹、アレルギー性鼻炎
  • ゼチーア錠 10mg(エゼチミブ)
    高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症、ホモ接合体性シトステロール血症

どうした?どうなった?

全ての調剤が終了した後に鑑査を行ったが、ゼチーア錠10mgを手にとった際に、同様の外観のPTPシートが目に入った。同一薬剤を2回調剤して、セレスタミン配合錠を調剤していないのではないかと思い、再調剤に向かった。再調剤をしようとした時、ゼチーア錠とセレスタミン配合錠のシート背面が酷似していることに気がついた。結果的には正しく調剤し、なんら問題はなかった。

なぜ?

ゼチーア錠とセレスタミン配合錠の錠剤の形は円形と楕円形で全く異なるが、PTPシート背面からの見た目は、大きさ、縞模様の柄、色が極めてよく似ている。調剤時、両剤をどちらも凸面を合わせて輪ゴムで止めており、PTPシートの背面で薬を認識した。また、この2剤の背面が酷似していることを知らなかった。

ホットした!

鑑査では、落ち着いて両面を確認する。日頃から背面のデザイン類似性についても気を配っておく。今回は薬剤師が勘違いをしたが、同様の間違いを患者が起こす可能性は十分に考えられる。投薬時に注意喚起が必要である。
「調剤過誤防止システム」(医薬品などのバーコードを専用端末で読み込んで処方情報と照合し、別物調剤を防止するシステム)を採用する。

もう一言

本事例は2014年より以前に起こったが、2014年6月にゼチーア錠10mgのPTPシート包装のデザインが変更された(図1の右)。背面には「ゼチーア10mg」の大きな印字とGS1バーコード(調剤包装単位)が上半分に記載されている。更に、地色の色調も変更されている。表面においてはデザインの変更はない。これにより調剤の場面で間違える可能性は少なくなった。しかし、患者宅においては、PTPシートから薬剤を切り離した場合にいまだ間違える可能性があるので、充分に注意する必要がある。

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2016年2月15日

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