Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例10

遮光が必要なのはモーラステープ?

ヒヤリした!ハットした!

モーラステープL40mgを貼ったところ(下肢部)を日光に当てないように指導したら、患者は誤解して、本剤を日陰に置こうとした。

<処方1>40歳代の女性。病院の整形外科。処方オーダリング。

モーラステープ L40mg 10袋(70枚) 1日1回 下肢部に貼付

<モーラステープ L40mgの効能効果>

  • 下記疾患並びに症状の鎮痛・消炎
    • 腰痛症(筋・筋膜性腰痛症、変形性脊椎症、椎間板症、腰椎捻挫)、変形性関節症、肩関節周囲炎、腱・腱鞘炎、腱周囲炎、上腕骨上顆炎(テニス肘等)、筋肉痛、外傷後の腫脹・疼痛
  • 関節リウマチにおける関節局所の鎮痛

どうした?どうなった?

患者は足の手術のため病院の整形外科に入院中であった。薬剤師が服薬指導のため病室に赴き、「この薬を貼っている間、日に当たると光線過敏症といって赤くなるとか、腫れることがありますので、出来るだけ日光に当たらないようにしてください。」というような説明をしたところ、患者から「じゃあ、窓際に薬を置かないようにするね。」と言われた。

なぜ?

患者は、日に当てた薬を貼ることで赤くなったり、腫れたりすることがあると誤解したようだった。すなわち、「この薬は、日に当てて使うと光線過敏症といって赤くなるとか、腫れることがありますので、出来るだけ日光に当たらないようにしてください。」と思い込んだものと考えられる。
この薬剤師は、副作用は出来るだけ上記のように具体的に説明するように心がけていたが、これまでもこのような患者が数人ほどいたため、説明の仕方が悪かったのではないかと思われた。誤解を受けるような言い方をしたのかもしれないが、何故誤解されたかは不明である。
また、患者は入院中で自由に外出することができない状態であったため、「日に当たると」という説明に対して、自分が日光に当たるということをあまり想定しなかったのかもしれない。

ホットした!

患者にどんな受け取り方をされるかわからないため、特に副作用に関しては、患者が誤解しないような説明の仕方を心がけなくてはいけないと認識した。イラストを使う方法なども良いかもしれない。また、説明のあとには必ず「お解り頂けましたか?」といったような確認を行うことを心がけることにした。

澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2016年2月5日

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