Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット
事例06

手書き処方せんを読み間違って半量を調剤

ヒヤリした!ハットした!

ノルバスク錠5mgのところを間違って2.5mg錠を調剤してしまい、そのまま交付しそうになった。

<処方1>55歳の男性。内科クリニック。手書き処方せん。

記号付きの手書き処方箋

医師の処方意図は以下である。

セララ錠 50mg
1T(錠) 1日1回 朝食後服用 28日分
ノルバスク錠 5mg
1T(錠) 1日1回 朝食後服用 28日分

<効能効果>

  • 高血圧症、狭心症

どうした?どうなった?

処方は手書きであった。
「ノルバスク5mg」と書かれていたが、ノルバスクの「ク」が数字の「7」または「2」に見えた。更に、その後に「.」(ピリオド)がついていたため、間違って2.5mg錠で調剤してしまった。即ち、実際には7.5mg錠は存在しないので、瞬間的に2.5mg錠と思い込んでしまった。

鑑査者も間違いを見逃し、服薬指導時に患者から「いつもと違う」と指摘され、間違いが発覚した。その後、医師の処方意図である5mg錠で正しく再調剤し、患者に交付した。

なぜ?

手書き処方せんで達筆であったため、判読が難しかったが、無理に思い込みで読み取ってしまった。

調剤時、鑑査時には薬歴をきちんと確認する必要があるが、今回はそれを実行しなかった。手書きなどで、一見、処方内容が判断できないと少しでも感じた場合には、前回処方などを確認する必要があった。

ホットした!

基本的な以下のチェック項目を徹底することにした。

  • 処方せんを受け付けたら、先ず薬歴を確認し、変更があればその変更が正しいのかどうかを患者に確認し、齟齬があれば医師に疑義照会する。
  • 薬剤師一人の思いこみで調剤しない。手書き処方せんなどで少しでも読み取りが出来ない場合には、無理に読み取るのではなく、他の薬剤師にも処方せんを見せて、意見を聞いてから調剤に取りかかるようにする。
  • 服薬指導時は、処方せんをチェックしながら、必ず患者に薬を見せて確認してもらう(本事例ではこの点が実施されていたため間違いが発見された)。
澤田教授

澤田教授
四半世紀にわたって医療・介護現場へ高感度のアンテナを張り巡らし、薬剤師の活動の中から新しい発見、ヒヤリ・ハット・ホット事例を収集・解析・評価し、薬剤師や医師などの医療者や患者などの医療消費者へ積極的に発信している。最近は、医薬分業(薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行うこと)のメリットを全国民に理解してもらうためにはどのような仕組みとコンテンツが必要かや、医療・介護の分野でDXが進む中で薬剤師はどのような役割を果たすべきかなどを、日々考えている。

薬学者。東京大学薬学部卒業。その後、米国国立衛生研究所研究員、東京大学医学部助教授、九州大学大学院薬学研究院教授、東京大学大学院情報学環教授を経て、現在、東京大学大学院薬学系研究科客員教授。更に、NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター理事長・センター長。著書には「ポケット医薬品集2024」(南山堂,2024年)、「処方せんチェック・ヒヤリハット事例解析 第2集」(じほう,2012年)、「ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント」(日経BP社,2011年)、「処方せんチェック虎の巻」(日経BP社,2009年)、「薬学と社会」(じほう,2001年)、「薬を育てる 薬を学ぶ」(東京大学出版会,2007年)など他多数。

記事作成日:2015年11月16日

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