パソコンで仕事をすることがどの職種でも当たりまえとなっている現代において、多くの人が目を酷使しています。また、空気中にある化学物質による目へのダメージも、昔よりも増えているのが現状です。何かしらの目のトラブルを抱えている人も多く、点眼剤とは親友であるという人もいるでしょう。今回はそんなOTC点眼剤の注意点などをまとめました。

薬剤師の中でも誤解している人が多い点眼剤

点眼剤を購入しにくる患者さんの中には、少なからず「防腐剤や血管収縮剤の入っているものは怖い」という評判を気にされている方がいます。薬剤師の中にもそう思っている人もいるくらいです。
防腐剤を気にされる患者さんには、防腐剤フリーの製品を勧めると思いますが、ここで注意する点があります。実は、使い切りタイプ以外の点眼剤では、品質保持を目的として防腐成分は必ず使われているのです。防腐剤フリーと書かれている商品でも、使い切りでなければホウ酸などの防腐成分が使われていることを覚えておいてください。加えて、防腐剤の具体的成分は塩化ベンザルコニウムやソルビン酸カリウムなどですが、これらの成分は微量であり、涙で中和され排出されるので、ほとんど問題になることはありません。そのため、これら微量の防腐剤を本当に気にするべき人は、コンタクトレンズをしている人(防腐剤がコンタクトレンズに吸着するなど悪影響を及ぼす可能性がある)と、涙が少ない重度のドライアイの人です
血管収縮剤については、健康な目に対して過剰に使うと確かに良くありません。しかし、目が炎症などで重度に充血している場合には、血管を収縮しないと悪化してしまいます。用法用量を守って正しく使用し、症状が治まったら使用を止めてもらうことが大切です。

症状から適した点眼剤を選択しよう!!

症状が明らかに重度の場合には、速やかに眼科受診を勧めるべきです。OTC点眼剤で対応できる症状としては、①パソコンや読書で目が疲れた、②紫外線やゴミで目が充血した、③乾燥やコンタクトの調子が悪くて目が少し乾く、④目の老化やパソコンなどの使い過ぎで目がかすむ、⑤花粉症などで目がかゆい、⑥朝起きると目やにが多い、⑦目に異物があるようにごろごろする・痛みがある、といった7つに分類されます。

① パソコンや読書で目が疲れている場合

疲れ目が酷くて炎症や痒みもあるといった場合には、数種類の抗炎症成分に加えて抗ヒスタミン成分を含んだロートV11がおすすめです 。日々慢性的に疲れ目に悩んでいるというときには、目の代謝を活発にする成分を含んだサンテメディカル10などを検討しましょう。頻繁に使用したいとの希望があれば、防腐剤や血管収縮剤を含んでおらず、比較的低価格のロートクール40αが患者さんに好まれるでしょう。

② 紫外線やゴミで目が充血している場合

ゴミが入った場合や、コンタクトレンズが合わずに炎症している場合には、炎症を抑えるよりもゴミを除去したり、ずれたコンタクトレンズを整えたりする処理が優先されます。その際には、涙の代わりとなる人工涙液タイプのソフトサンティア®などが候補となるでしょう。紫外線によって炎症が起こったならば、抗プラスミン作用を持つイプシロン‐アミノカプロン酸などを含んだ、ノアール®UVなどが候補に挙げられます。糸を引くようなひどい目やにを伴った充血の場合には細菌などの微生物感染が悪化している可能性があるので受診を勧めるべきですが、病院にかかるまでのつなぎとしてどうしてもということであれば、エーゼット®抗菌目薬が考えられます。

③ 乾燥やコンタクトの調子が悪くて目が少し乾く場合

さらさらしたものよりも粘度が強い点眼剤のほうが、保水効果が長く維持できます。新ロート ドライエイド®EXがそれにあたります。また、ロート養潤水αには、寝る前に点眼することで寝ている間に目の回復を促進する作用があります。

④ 目の老化やパソコンなどの使い過ぎで目がかすむ場合

目の老化自体は治せませんが、抑えることはできます。老化によって目のピント調節機能が低下するため、それを促進するのが良いです。ピント調節促進、代謝促進、血行促進の3つの成分を配合したサンテドウプラスEアルファ®などが考えられるでしょう。

⑤ 花粉症などで目がかゆい場合

アレルギー症状を抑える成分を含んだザジテン®AL点眼液が一般的です。合わせて鼻炎スプレーなどと併用するとより花粉症症状を幅広く抑えられるので良いでしょう。

⑥ 朝起きると目やにが多い場合

OTCで対応できるのは朝目やにが少しあるといった軽度なもので、血が混じっている、あるいは目があかないといった重度な場合には、速やかに受診を勧めてください。軽度な目やになら、目やにを分解することができるリゾチームを含んだスマイル40メディクリアなどが候補となります。

⑦ 目に異物があるようにごろごろする・痛みがある場合

この症状もまずは受診をおすすめするべきです。受診までのつなぎとして必要となる場合には、使っている点眼剤自体に異物や細菌が混入して汚染されることを防ぐために、抗菌成分を含み、かつ1回使い捨てタイプが良いかと思います。抗菌アイリスα、ティアーレ®抗菌目薬などがこれに該当します。

近年はOTC点眼剤も様々な種類のものが出てきました。これらを正しく選んであげるのが薬剤師の腕の見せどころかと思います。ぜひ正しく患者さんに進められるようになってください。

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