不規則な生活を送りがちな現代においては、不眠に悩まされている方が増えています。眠れないということそのものがストレスとなり、そのストレスが身体に害を及ぼすこともあります。こういった場合は薬物治療で対処したほうがよいでしょう。本来、きちんと受診した後、適切な睡眠薬を処方してもらうことがベストですが、症状が軽いときや病院に行く時間がないなどの緊急時には、とりあえずOTCで対処する方もいます。今回はOTCの睡眠改善薬について、薬剤師がおさえておくべき注意点と、代表的な薬の効果を成分別に解説します。

薬剤師から説明すべき重要なポイントとは?!

不眠の患者さんがOTCを購入する際に、薬剤師に「睡眠薬をください」と伝える場合が多いと思います。ここで、今回のコラムの中で1番といっていいくらい大事なことがあります。それは、OTCの睡眠薬は存在しないことを、患者さんにきちんと伝えることです。不眠対策用に販売されているOTCは、睡眠薬でも、睡眠導入薬でもなく、「睡眠改善薬」です。これは、直接的に眠気を起こすとういうよりも、身体が眠たくなるように間接的に働きかけるものです。そのため、恒常的に不眠である人には向いていません。実際の添付文書、例えば、ドリエル®の添付文書の使用上の注意欄には「常的に不眠の人」や「不眠症の診断を受けた人』は服用しないでください、と記載されています。ここを患者さんに示し、恒常的に不眠の人は、通常の人よりもホルモンバランスが乱れているなどのように身体の状態が変化してしまっているので、間接的に眠たくなるような作用では効き目が小さいことが考えられることを説明しましょう。加えて、ドリエル®などの睡眠改善用OTC薬の大部分は、飲み続けた場合、早い段階で耐性ができて効かなくなる傾向にあります。そのため、長く飲むには向いていないという事情も伝え、受診することをおすすめしましょう。
これらのことを、きちんと薬剤師側から説明するようにしてください。

実際の成分を見てみよう!!

睡眠改善薬のOTCの成分としては、(1)抗ヒスタミン作用を持つジフェンヒドラミン、(2)抗不安作用を持つブロムワレリル尿素・アリルイソプロピルアセチル尿素、(3)催眠作用や鎮静作用などを持つ生薬であるサイコ、サンソウニン、カンゾウなどの3種類に分けられます

(1) 抗ヒスタミン作用を持つジフェンヒドラミン

ご存知のように、ジフェンヒドラミンはアレルギーの薬として使われていた成分です。アレルギーの薬は眠気の副作用が出ることがありますが、この副作用を逆手にとり、眠気を起こす薬として販売されるようになりました。
さて、ジフェンヒドラミンを含むOTC薬の特徴を見てみましょう。ドリエル®やネオディなどは1回2錠なので、大きい錠剤が飲みにくい方におすすめです。一方、スリーピンやプロリズム®は液状成分をカプセルにつめたもので、液状成分なので効果が速やかにあらわれやすいとうメリットがあります。ただしカプセルの口の中にこびりつく感じが苦手な方などには向かないようです。ジフェンヒドラミンは飲み続けた場合、早い段階で耐性ができて効かなくなる傾向にあるため、この点も患者さんにきちんと伝える必要があります。

(2) 抗不安作用を持つブロムワレリル尿素・アリルイソプロピルアセチル尿素

ブロムワレリル尿素・アリルイソプロピルアセチル尿素を配合してるものにウット®があります。(2)を含んだものの特徴としては、神経が高ぶって眠れない方により適しているという点です。ただし、ウットもジフェンヒドラミンを含みますので、耐性ができやすいという注意点は同じです。(2)はもともと医療用で使われていた睡眠薬の成分なので、効果は(1)単独のものよりも強めですが、その分、副作用のめまいやふらつきなどが起こりやすいことにも注意です。

(3) 催眠作用や鎮静作用などを持つ生薬であるサイコ、サンソウニン、カンゾウなど

これらのうち代表的なものとしてはレスティ錠があります。カンゾウやサイコなど9種類のハーブエキスが含まれており、自律神経の乱れを整えることで自然な眠りをもたらします。(1)、(2)の成分に比べると作用は弱めですが、薬の効き目には患者さん自体の薬への心理学的信頼感も影響することがあるので、生薬系が良いという方におすすめしてあげると良いです。

選択肢のひとつとしてサプリメントも知っておこう

医薬品に抵抗がある患者さんには、サプリメントをおすすめするのも手です。例えば、リラックスの素(DHC)は含有されているテアニンがあげられます。サプリメントも他にいろいろと販売されているので、化学物質のプロの目で良いものだけを選別して覚えておき、患者さんに聞かれたときのために知っておくと良いかもしれません。もちろん、セロトニンやメラトニンの素となるタンパク質をきちんととったり、セロトニンを作ってくれる腸内細菌を毎日きちんと補ったりするといった生活習慣の改善の指導も合わせて行うことも薬剤師としては重要です
また、まったく改善が見られなければ、きちんと受診をすすめてください。日本人は心療内科を受診することに抵抗がありますが、そこは薬剤師としてきちんと症状について説明したうえで、受診をしたほうが良い旨を伝えることが重要です。そのためにも今回の話がその一助になればと思います。
ぜひ、患者さんに取って身近な不眠対策のプロになってください。