近年のOTC薬の進化によって、風邪用OTC薬のラインナップも充実してきました。ちょっとの風邪くらいでは休めない会社員などの中には、OTC薬で対処する人が増えてきているようです。この流れの中で薬剤師としても、患者さんの症状・主訴、薬の好みなど、様々な視点から、その人に合ったOTC薬を選択できるようになりましょう。

風邪の定義から確認しよう!!

風邪は、正式には「風邪症候群」といいます。元々の定義は、鼻・咽頭・喉頭といった上気道と呼ばれる部分に急性炎症を呈する症状の総称です。近年では上気道にとどまらず、気管・気管支・肺といった下気道にまで炎症が広がっている状態も含めた総称として使われることが多いです。要するに、風邪自体は疾患名ではなく、鼻から気管支までに広がる急性炎症の組み合わせの総称なのです。
風邪の病名としては、「急性鼻炎」や「急性咽頭炎」などといったものが挙げられます。具体的な症状は、鼻炎症状の他、くしゃみ、鼻づまり、発熱、咽頭痛などです。炎症が最初に鼻に現れるか喉から現れるかといった順番は人によって違いはあるものの、結果として症状がほとんど同時に現れるので、これらの症状をまとめて「風邪症候群」と呼んでいます。
また、鼻炎症状や発熱などの一般的な症状を「感冒」と呼んでいます。こういった症状が多数存在する場合に、つまり「総合感冒状態」であるときに利用するのが、総合感冒薬、いわゆるOTC風邪薬です。

症状がまだ1つであれば総合感冒薬はおすすめしない方がよい?

炎症の原因としては、細菌などの感染や、乾燥による刺激など様々ですが、感染性炎症の内訳はウイルス性のものが8割以上です。薬局では原因まで特定することはもちろん不可能ですが、その時点で特にひどい症状が何かをきちんと見極めて適切に選べるようになりましょう。
感冒のうち症状が明らかに1つしかない場合には、総合感冒薬だと余分な成分が配合されているので、ピンポイントで効果のあるものを選ぶべきです。具体的には、頭痛や咽頭痛がひどいなら、解熱・鎮痛作用がある、ロキソプロフェンやアスピリンを含んでいる、ロキソニン®Sやバファリンシリーズ。鼻水が酷いのであれば、抗ヒスタミン作用や抗アレルギー作用のある成分を含んでいるアレグラやパブロンS鼻炎カプセル。咳がひどいならリン酸コデインなどを含んでいる、アネトン®シリーズ、といった感じです。
風邪をひいているときは、成分を分解するにも、身体に負担がかかります。その人に適したOTC薬を即座に選出できるよう、薬剤師としての腕を磨きましょう。

症状が複雑なときにはどうやって選ぶ?

気になる症状が複数あるときには、総合感冒薬の出番となります。薬剤師の目から見て1番明らかな症状に対する成分を、続いて2番目に気になる症状の成分を考え、それらを含んだOTC薬を選ぶと良いと思います。
ここでポイントなのが、患者さんが訴える症状は当然ですが、薬剤師から見た症状も考慮すること、そして鎮痛成分を含む薬を選ぶのが望ましいということです。患者さんの自覚症状にとらわれすぎてしまうと、裏にある真に対処すべき症状をマスキングしてしまうことがあります。例えば、薬剤師が、痰が絡んでいて声がかすれていると判断しても、患者さんが咳はないと訴えている場合などです。患者さんの自覚症状はもちろん大事ですが、専門家である薬剤師としての感性も大事にするべきです。また、ご存じのように鎮痛成分には抗炎症作用もあるので、風邪症候群の元々の原因である炎症を抑え、幅広い感冒に対処してくれます。

OTC総合感冒薬にはたくさんの種類がありますが、患者さんの中にはこれと決めている方も多くいらっしゃいます。特にOTC総合感冒薬でその傾向が強いようです。近年、患者さんの心理が薬の効果に影響することが報告されています。これに配慮することも機転の利いた対応として重要です。無理にすすめるよりは、患者さんが決めている銘柄と同じシリーズ、または同じ成分のものをすすめるのも良いでしょう。

風邪が流行する今の季節、ぜひ上記のことを意識してみてください。

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