この季節、花粉症で悩んでいる方も少なくないと思います。鼻水やくしゃみ、目のかゆみなど主な症状に対しては、以前にこのコラムでも紹介した小青龍湯が有効となります。また、花粉症の方の中には、皮膚のかゆみや湿疹が出てしまう方も少なからずいらっしゃいます。花粉が引き金となってアレルギー反応が起こることを考えれば、鼻や目だけでなく、肌にも症状が現れるのはメカニズムの観点からみてもあり得ることでしょう。そこで今回は、漢方医学の観点から改めて花粉症の原因や治療法を学んでみましょう。

漢方医学の「気・血・水」で考える 花粉症の原因

漢方医学での基礎となる「気・血・水」で考えた時に、花粉症で鼻水やくしゃみといった症状が出る方では、体内で水の偏りが生じている、「水滞」が原因となっていることが多いです。むくみやすい体質でもあり、むくみが鼻に来ると鼻炎症状がでます。人によっては水滞がさらに肌にも影響し、湿疹がでる人もいます。

漢方医学の「証」で考える 花粉症の患者タイプと漢方薬

また、こちらも漢方医学の基礎のひとつである「証」によって考えた時、花粉症の患者タイプとしては大まかに下記3つに分けられます。
(1)身体が冷えている方
(2)身体が熱くなっている方
(3)中間の方

(1)では、サラサラの鼻水が出やすく、例えば、体を強力に温めて水を循環させる効果のある附子が入った、麻黄附子細辛湯が良いでしょう。
(2)では、赤ら顔や強い鼻づまり、のどの渇きといった症状が出やすく、強力に身体を冷やす石膏を含有した辛夷清肺湯などが良いと考えられます。
(3)の場合には、鼻水と鼻づまりが共存した状態です。これには、風邪の引き始めで有名な葛根湯に、鼻の通りを良くする辛夷と副鼻腔炎に効果のある川芎が加わった葛根湯加川芎辛夷が良いと思います。

皮膚のかゆみの原因 水滞はない場合も

皮膚のかゆみでは、乾燥や皮脂不足も原因となることから、前述した水滞以外が原因のこともあります。花粉症の時期に皮膚にアレルギー症状がでてきてかゆくなるという方は確かに水滞が原因である可能性が高いです。

しかし、通年を通して肌にアレルギーがあるという方は、「血虚」が原因となっていることも多いです。血の循環が滞ることで、皮膚に栄養がいきわたらなくなり、結果として皮脂の分泌が低下して、皮膚の乾燥へとつながります。花粉症シーズンに皮膚のアレルギー症状で来局した方をカウンセリングする際には、そのシーズン以外の肌の状態を確認すると良いです。

もし、普段からむくみなどはひどくなく、かつ、花粉がない状態でも皮膚に湿疹やかゆみが出やすいということであれば、水滞が原因ではなく、血虚の可能性があります。

皮膚の不調に対する漢方薬

皮膚は他の様々な身体の不調ともつながりやすいため、他の症状も踏まえて漢方薬を選ぶ必要があります。皮膚のかゆみの他に、赤みとかゆみがある方には黄連解毒湯、冷え症で皮膚の乾燥がひどい方には当帰飲子、疲れやすくむくみやすい方には六味地黄丸、また体力がなく疲労倦怠感がある方には真武湯が向いています。加えて、皮膚のかゆみだけでなく、不眠傾向がある方には加味帰脾湯が適しています。さらに、皮膚のアレルギー症状が慢性化したため黒ずんでしまい、さらに鼻炎も伴っているといったさらに酷い方には荊芥連翹湯が良いです。

身体の内面から考えてみると、五臓六腑と皮膚とは密接に関連することが古来より知られています。現代でも皮膚は内臓の状態を見るのに適していると考えられています。その中でも、脾が弱る脾虚による皮膚の不調には、補中益気湯が有効です。

最新のメカニズム研究では、腸管免疫機能を高めることで免疫のバランスを調えることがわかりました。それによってIgE抗体産生を抑え、結果としてアレルギー反応が起こらないようになります。西洋医学においても、皮膚の不調には外用薬だけでなく、ビタミン剤などで内面から治す治療も同時に行います。漢方医学でも内面から治すことも大切にします。
ぜひ幅広い観点から花粉症を見つめてみてください。

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