衛生環境が良くなってきた現代において、肺炎は以前より頻繁には見かけなくなりました。ただ、超高齢社会を迎えた我が国では、肺炎がまたじわじわと増えてきています。平成26年の調査※では、肺炎は日本人の死亡原因の第3位で、特に65歳以上の高齢者で肺炎の死亡者が増えています。
肺炎は、介護施設などで1人が罹患するとその施設全員に広がり、パンデミックも起こりかねない怖いものです。今回は、肺炎に使われる抗菌薬の特徴や注意点などを学んでみたいと思います。

※厚生労働省 平成26年 人口動態統計 月報年計

そもそも肺炎ってどういう病気??

肺炎とは、原因となる細菌やウイルスなどが鼻や口から侵入、喉を経由して肺に入り、その結果、肺に炎症が起こる病気です。通常の健康な人であれば、喉の段階で免疫によってブロックされますが、風邪などで免疫能が低下していると、細菌やウイルスが肺まで到達してしまい、肺炎を発症します。

肺炎といってもその種類は多岐に渡っており、必ずしも感染性のものとは限りません。そのため、肺炎だからといって何でもかんでも抗菌薬が使われるわけではありません。
非感染性のものとしては、インターフェロンなどの薬剤による間質性肺炎や、嚥下困難の高齢者がなりがちな誤嚥性肺炎、また、関節リウマチなどにおける膠原病性肺炎などがあります。しかし、今回は抗菌薬の観点から肺炎を考えるので、これらは除外して考えます。

今回の主題である感染性肺炎を見てみると、(1)細菌性、(2)ウイルス性、(3)真菌性、(4)寄生虫性の4つに分けられます。
(1)細菌性の肺炎としては、肺炎レンサ球菌が主な原因ですが、他にもインフルエンザ菌なども一定の割合を占めます。マイコプラズマに関しては意見がわかれるものの、1番小さな細菌という分類で(1)に含むことにします。
(2)ウイルス性の肺炎に関しては、インフルエンザウイルスやRSウイルスなどが原因ウイルスとして挙げられます。臓器移植患者やエイズといった免疫不全患者などでは、サイトメガロウイルスでも肺炎が起こることがあります。
(3)真菌性の肺炎としては、クリプトコッカスやニューモシスチスなどが原因としては挙げられます。(4)寄生虫性の肺炎としては、マラリア原虫やトキソプラズマなどです。

市中肺炎の中で、(1)細菌性がで最も一般的なもので、(2)ウイルス性、(3)真菌性、(4)寄生虫性は肺炎全体から見るとかなり少ない割合です。また、風邪の後などの続発性肺炎の主な原因も(1)細菌性ですので、薬剤師が関わる可能性が一番高い肺炎としては(1)であると考えられます。ですので、肺炎と抗菌薬の関係を知っておくのが大事ということになります。

肺炎で使われる抗菌薬に関しての特徴と注意点とは??

薬剤師が対応する患者さんとしては、入院を必要としないレベルが大半ですので、来局する患者さんを想定してみましょう。処方される抗菌薬としては、主に、クラリスロマイシンやアジスロマイシンなどのマクロライド系や、レボフロキサシンなどのニューキノロン系が多いと思います。これらの抗菌薬が処方された時、薬剤師として注意したいことがあります。それは薬剤耐性菌と、肺炎「以外」の可能性です。

近年問題になっていることですが、今でもまだ風邪に抗菌薬の処方がなされることがあります。そこで大事になってくることは、医師の処方意図を考えることです。咳や鼻水がひどくなってから服用するために処方している場合や、その時の患者さんの状態や年齢を考慮し、その後の肺炎への移行を想定して処方されている場合などが考えられます。患者さんの中には、風邪で抗菌薬を服用しても意味ないという報道を見て、そのことを心配する方もいます。そういった方には、服薬指導時の患者さんの状態をみながら、処方意図を一緒に確認して安心してもらうと良いでしょう。

また、近年、抗菌薬に耐性を持つ細菌による肺炎も増えてきていたり、肺炎だと思ってもなかなか治らないと思ったら結核だったりということもあります。風邪などでクリニックを受診し、その後何ヵ月も症状が治らないなどの場合には耐性菌や結核を疑って、感染症専門の病院への受診勧告をすると良いと思います。

もちろん、最も大事な予防策は、うがいや手洗いをきちんと指導することです。加えて、実はタバコを減らすことも予防になります。タバコを吸うと気道粘膜を傷つけて感染が起こりやすくなるので、タバコの本数を減らしたり、禁煙を促したりすることも肺炎予防には効果的でしょう。禁煙の意義の一つとして肺炎予防があることを説明すると禁煙促進にもつながるので有効です。

在宅医療に薬剤師が関わることが増えている昨今、肺炎の患者さんに接する機会も多くなってきます、ぜひ患者さんとのコミュニケーションを考えてみてください。

 

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