薬局やドラッグストアに行くと、漢方薬のコーナーに必ずといっていいほど置いてある小青竜湯。葛根湯などとともに、風邪のコーナーにあることも多いので風邪の漢方薬と思っている方も少なくありません。名前もかっこいいので覚えやすい漢方薬でもあります。ただこの漢方薬は必ずしも風邪の漢方薬というわけではありません。今回は、メジャーどころだけど実は奥が深い小青竜湯について学んでみましょう。

まずは小青竜湯の基本を復習してみよう!!

小青竜湯は、風邪に効く漢方薬というよりは、鼻水や鼻炎などのアレルギー症状に効く漢方薬です。ハンゲ、カンキョウ、カンゾウ、ケイヒ、ゴミシ、サイシン、シャクヤク、マオウから構成されています。構成生薬の中で、カンキョウとカンゾウの組み合わせが、主に水のようなサラサラとした鼻汁が多量に出る症状に有効であると考えられています。鼻風邪に効くと一般的には言われていますが、粘性のある鼻水にはあまり有効ではありません。

名前に入っている青竜は中国の神話に登場する四神の1つで、東方を守る神です。五行説で東方の色は青であり、この青は本来緑色植物の色である緑色だと考えられています。そのため、青竜の青は小青龍湯に含まれるマオウの緑色から名付けられたと言われています。*
*ツムラ・メディカルトゥデイ 漢方頻用処方解説 小青竜湯①

ちなみに、小青から予想できるように、大青竜湯という漢方薬もあり、小青竜湯よりも症状がひどい湿疹や麻疹、風邪などに使われる傾向があります。

小青龍湯は予防にも使える?

風邪や鼻炎に効果を発揮する小青龍湯ですが、近年の研究によって予防的な効果も期待できる漢方薬ということがわかってきました。

アレルギーは、即効性のアレルギー反応に関与するヒスタミンと、遅発性のアレルギー反応に関与する好酸球によって引き起こされます。さらに、これらの反応が反復炎症化してその結果、アレルギーが難治化・重症化することもあります。小青竜湯には、ヒスタミンと好酸球の働きを抑制するだけではなく、反復炎症化を抑える働きもあるとみられています。現状、添付文書への記載はないものの、いずれは予防効果への期待も持てるようになるかもしれません。

つまり患者さんの証にぴたっと合えば、幅広い効果が期待できるということです。眠くなりにくいので花粉症に対して使用することも多いですが、鼻炎が悪化して粘性のある鼻水になると、熱証に変わるので、元々寒証に適応するこの小青竜湯は効きにくくなります。鼻がむずむずして、くしゃみが出始める前の寒証の状態である1・2月頃から飲み始めると効果的です。こういった話も患者さんに説明してあげると良いのではないでしょうか。

注意すべきことは??

漢方薬も医薬品であることには変わりないので、もちろん気を付けるべき点があります。皆さんは鼻風邪で来局した患者さんに対して、一律に小青竜湯を勧めていたりしませんか?実は、小青竜湯に含まれるマオウは、胃腸が弱い方は避けた方がよい生薬です。胃腸が弱いと明らかに自覚している患者さんにはあまり勧められないということを伝えると良いかと思います。

また、特に胃腸に問題がない場合でも、「貧血などはないのに顔色が悪くなったり、ひどくむくんだり、また胃が荒れて気持ち悪くなったら服用中止してください」と一言添えると良いでしょう。薬を渡して終わりではなく、薬を渡した後のケアもできる薬剤師になれるよう、ぜひご自身でも勉強してみてください。