事例で学ぶ 処方チェック コミュニケーション

CASE.9

女性患者にイリボー錠が初回から最高投与量で処方されていたら?

  • 消化器系
関連キーワード:
  • 女性
  • 投与量

難易度:★★★

疾患名:下痢型過敏性腸症候群
  • 医薬品販売名:イリボー錠
  • 医薬品一般名:ラモセトロン塩酸塩

問題

下記の事例において、何をチェックし、具体的には何が問題であり、
疑義照会する際はどのように伝えればよいでしょうか?

下痢型過敏性腸症候群と診断された30 歳代女性に内科クリニックからイリボーが処方された。

<処方> 内科クリニック

  • イリボー錠 5 µg
    1 錠   1日1回 夕食後   14日分

チェックすべきことは? 何が問題?
解答・解説を見る

解答

チェックポイント

・イリボー錠<ラモセトロン塩酸塩>の用法・用量をチェックする。

問題点

患者にイリボー錠の服用歴を聴取したところ、下痢がつづいており過敏性腸症候群であるとのことであり、イリボー錠は今回初めての服用であることが確認された。女性の場合、初回投与量はラモセトロン塩酸塩として 2.5 µg を 1 日 1 回投与である。本処方では女性の初回投与量としては用量が多い。

疑義照会

「イリボー錠を処方された患者さんですが女性で初回の服用であるということなので、初回投与量は 2.5 µg となっております。ご確認をいただいてもよろしいでしょうか。」
疑義照会の結果、本事例では、医師が男性用量(男性の初回投与量は 5 µg である)と間違えていたとのことであった。

まとめ

・ラモセトロン塩酸塩は、男女で投与量が異なることを認識しておく。

解答に必要な医薬品情報

イリボー錠の添付文書
・男性における下痢型過敏性腸症候群
通常、成人男性にはラモセトロン塩酸塩として5μgを1日1回経口投与する。
なお、症状により適宜増減するが、1日最高投与量は10μgまでとする。

・女性における下痢型過敏性腸症候群
通常、成人女性にはラモセトロン塩酸塩として2.5μgを1日1回経口投与する。
なお、効果不十分の場合には増量することができるが、1日最高投与量は5μgまでとする。

もっと知る!

・イリボー錠の臨床薬理試験では、健康成人(男性 20 例、女性 20 例)を対象にラモセトロン塩酸塩 5 µg を単回経口投与した結果、女性の曝露量は男性に比べて高かったが、体重あたりの経口クリアランス(CL/F)の幾何平均値比は女性で有意に低く、吸収率は良好で腎クリアランスに性差がほとんど認められないことから、曝露量の差は男女の代謝能の差に起因していると推察された([文献 1])。
・ラモセトロン塩酸塩の代謝には CYP1A1、CYP1A2 及び CYP2D6 が関与しているが、ヒトにおいては CYP1A2 が重要な役割を担っていることが示唆されており、CYP1A2 の代謝活性は男性の方が大きいことが推測されることから、ラモセトロン塩酸塩において薬物動態に性差が認められた理由は代謝過程、特に薬物代謝酵素 CYP1A2 の影響が大きく関与しているものと推定された([文献 1])。

・イリボー錠以外で性別により用量・用法が異なる医療用医薬品の例を以下に示す。詳細は各医薬品の最新の添付文書を確認されたい。

 ●初期投与量が異なる医薬品
 ピオグリタゾン塩酸塩(効能・効果:2 型糖尿病)
 ※ピオグリタゾン塩酸塩を含む配合剤も同様である
 添付文書の用法・用量に関連する使用上の注意
 「浮腫が比較的女性に多く報告されているので、女性に投与する場合は、浮腫の発現に留意し、1日1回 15 mgから投与を開始することが望ましい。」
アクトス錠 添付文書より抜粋
Pmdaでの添付文書情報はこちら

 ●通常用量および開始用量が異なる医薬品
 ・注射用メトレレプチン皮下注用(遺伝子組換え)(効能・効果:脂肪萎縮症)
 添付文書の用法・用量
 「通常、メトレレプチンとして、男性には 0.04 mg/kg、18 歳未満の女性には 0.06 mg/kg、18 歳以上の女性には 0.08 mg/kg を1日1回皮下注射する。」
メトレレプチン皮下注用 添付文書より抜粋
Pmdaでの添付文書情報はこちら

※ 添付文書の【用法・用量】または<用法・用量に関連する使用上の注意>の項に「女性」の記載がある医薬品を、独立行政法人医薬品器量機器総合機構の「医療用医薬品情報検索システム」で検索を行い、該当する薬剤の添付文書記載を精査した(2018.6.14 検索)。

文献
1.イリボー錠 2.5 µg/5 µg 審査報告書、2008 年 3 月 10 日

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